北海道におけるダイズわい化病の防除対策
農薬ガイドNo.109/E(2005.3.28) - 発行 アリスタ ライフサイエンス株式会社 筆者:小野寺 鶴将
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 はじめに

 北海道における近年のダイズ作付け面積は約2万haに増加しており、ダイズは畑作地帯における基幹作物であるばかりでなく、稲作地帯における転作作物として重要性が増している。しかし、北海道ではダイズわい化病が1970年代以降、慢性的に発生して問題となっている。
 ダイズわい化病は、ダイズわい化ウイルス(SbDV)がジャガイモヒゲナガアブラムシにより媒介されるウイルス病で、本病に罹病した株は草姿が矮化し、着夾・子実の充実が著しく悪くなるため、収量に与える影響がきわめて大きい。さらに、罹病株は成熟期に至っても落葉せず、茎水分が高いまま収穫期を迎えるため、コンバイン収穫では汚粒の発生原因にもなる。
 本病の防除対策として、殺虫剤の施用が行なわれているが、多発年には十分な効果が得られない場合も多く、ダイズ安定生産の主要な阻害要因となっている。
ここでは、北海道におけるダイズわい化病の発生状況と防除対策について概要を述べる。

1.ダイズわい化病の発生状況

 近年の北海道におけるダイズわい化病の発生および被害面積率を第1図に示した(なお、ここでの被害面積とは、罹病株率が20%以上である圃場を示す。)。
 本病の発生は毎年、作付面積の30~60%にみられ、被害面積率はおよそ1~15%で推移している。また、本病の発生量は年次間差が大きく、しかも第2図に示したように、同一年でも地域により発生量の差が大きい。少発年では本病の被害が問題とならない地域が多い一方で、多発年の常発地では十分な防除を実施しても罹病株率が50%を越え、収量が半減してしまうようなことが珍しくない。


▲第1図 北海道におけるダイズわい化病の発生および被害面積率
(農作物有害動植物発生予察事業年報、北海道病害虫防除所資料)


▲第2図 北海道におけるダイズわい化病の支庁別発生面積率
(2001年、北海道病害虫防除所資料)

2.発生生態

 ダイズわい化病の病原ウイルスは、病徴と媒介虫の違う4種の系統に分けられている。北海道ではダイズに発生する系統は、ジャガイモヒゲナガアブラムシ(以下、アブラムシと省略)が媒介し、葉柄や節間が短縮するわい化系統(SbDV-DS)および植物体全体が黄化する黄化系統(SbDV-YS)である。
 本病の発生量は、圃場周辺のクローバ類のウイルス保毒率と相関が高いことが知られており、保毒したクローバ類が本病の感染源である。また、アブラムシは広食性で多種の広葉草本上で越冬するが、ウイルスを媒介するのは保毒したクローバ上で越冬し、有翅虫となる個体である。
 北海道における本病の発生量は6月のアブラムシ寄生量と相関が高いこと、年に数回みられる有翅虫発生盛期のうち、5月下旬~6月までに見られる1回目の飛来虫の保毒率が高く、7月以降では極めて低いことから、本病の主要な感染時期は5月下旬~6月であると推定されている。
 北海道における本病のダイズへの感染および発病の経過は以下のようにまとめられる。

(1)保毒クローバ上で卵越冬したアブラムシは翌年春に幹母となり、その次世代が5月下旬~6月にかけウイルスを獲得した有翅虫となる。

(2)この保毒アブラムシは出芽間もないダイズ圃場へ飛来侵入し、茎葉を吸汁することによってウイルスが感染する(一次感染)。罹病した株はおよそ1ヵ月ほどで発病し、7月に顕著な病徴を示す。

(3)ダイズはアブラムシの好適な寄主であるため、圃場内で繁殖したアブラムシがさらに一次感染株からウイルスを再獲得し、歩行により周囲の健全株へウイルス感染株を広める場合がある(二次感染)。二次感染株は、8~9月にかけ一次感染株を取り巻くように発生し、一次感染株に比較して軽症であるのが特徴的である。これらの二次感染株は、5月下旬~6月にかけての有翅虫飛来時期に防除が不良であった圃場に多く見られる。


▲写真1 多発圃場における発生状況
(奥:防除区、手前:無防除区)


▲写真2 ダイズに飛来したジャガイモヒゲナガアブラムシ有翅虫

 

3.防除対策

 北海道では、ダイズわい化病の主要な感染時期が5月下旬~6月であることから、この時期にアブラムシの防除を実施する必要がある。発生地域では播種時に浸透性殺虫剤の粒剤が土壌施用されている。粒剤処理は施用後1ヵ月にわたりアブラムシの寄生密度を低下させ、二次感染を防止する効果がある。
 しかし、アブラムシの飛来開始時期はダイズの出芽期の前後となる場合が多いため、一次感染が多い、つまり保毒虫が多飛来する場合には十分な効果が得られない場合がある。このような場合には、第3図に示すように、出芽揃い期から殺虫剤の茎葉散布を7日毎に3回以内で併用すると効果がある。ただし、ダイズの出芽期に有機リン系やカーバメート系殺虫剤を散布すると薬害が発生するため、使用される殺虫剤は、従来、合成ピレスロイド系殺虫剤に限定されてきた。
 ところが、近年、有機リン系殺虫剤であるオルトラン水和剤が出芽期のダイズに薬害を発生させず、本病の感染防止に効果があることが明らかとなった(第1表、2表)。オルトラン水和剤は、合成ピレスロイド系殺虫剤にはない浸透性を有しているため、新葉の展開が著しい生育初期の葉裏に潜むアブラムシには特に有効と考えられる。


▲第3図 発生量が異なる圃場における殺虫剤の防除効果(2000年)
上:発病個体率、下:収量、播種日:5/22~24

供試薬剤
希釈倍率
寄生虫数
発病個体率(%)
8月18日
6月2日 6月16日 7月1日
オルトラン水和剤
1,000倍
0
5
0
3.3
シフルトリン乳剤
2,000倍
0
0
9
3
無処理
0
14
30
12
処理月日:6月3日,10日,17日
寄生虫数:30個体調査 (2000年、十勝農試)
▲第1表 オルトラン水和剤によるダイズわい化病の感染防止効果

供試薬剤
希釈倍率
寄生虫数
発病個体率(%)
8月27日
6月3日 6月17日 6月25日
オルトラン水和剤
1,000倍
0
3
1
1.3
シフルトリン乳剤
2,000倍
0
3
3
0
無処理
1
23
59
7.5
処理月日:6月3日,11日,17日
寄生虫数:50個体調査 (2001年、十勝農試)
▲第2表 オルトラン水和剤によるダイズわい化病の感染防止効果

 おわりに

 これまで、ダイズわい化病の防除は殺虫剤散布が中心であった。しかし、農薬によるダイズわい化病の感染防止効果は必ずしも十分ではなく、多発条件では限界があるため、他の防除手段との併用が望まれる。本病に対しては抵抗性育種が精力的に行なわれている。実用的な品種が早期に作出され、普及されることを期待したい。

(北海道立十勝農業試験場)

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