オルトラン粒剤の株元処理によるコナガの防除

上和田 秀美

- アリスタ ライフサイエンス農薬ガイドNo.78/A (1996.1.1) -

 

 

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はじめに

コナガはキャベツ、ハクサイ、ダイコンなどのアブラナ科野菜をはじめとして花類のストックなどで発生が多く、その被害が問題となっている。コナガは多くの薬剤に対して抵抗性が発達し、防除が困難なために難防除害虫として知られている。

鹿児島県では抵抗性の発達したコナガの防除対策として、定植時に粒剤の株元施用や性フェロモン剤を使用し、その後の結球開始期の前後から作用機作の異なる数種の散布剤を組み合わせて使用する体系防除を確立してきた。ここでは特に問題となっているキャベツ圃場における発生状況と薬剤抵抗性発達の経過、その防除対策とオルトラン粒剤の防除効果について紹介し、参考に供したい。

 

1.キャベツ圃場における発生状況

鹿児島県のように温暖な地域でのキャベツ栽培は様々な作型が混在し、周年栽培される。このような条件下ではコナガは年中発生し、春から初夏にかけての5~6月に発生のピークがみられ、夏期のキャベツの端境期にはほとんど発生がみられなくなる。秋期になって再び密度が増加しはじめ、9月~12月まで発生が多い傾向にある。したがって、コナガの発生密度はキャベツの作型によって異なり、4月以降にキャベツが圃場に存在するような栽培では極めて高くなる。

参考までにキャベツの栽培面積やコナガの発生条件別にその防除対策を第1図に示す。

第1図 鹿児島県におけるキャベツの生育段階とコナガの防除対策の目安

鹿児島県のキャベツ栽培で最も重要なコナガの防除時期は、春播き栽培では春から初夏にかけての結球開始時期頃の密度急増時であり、夏~秋播き栽培では9月以降の密度上昇の時期である。



2.抵抗性発達の経過

鹿児島県におけるコナガの薬剤抵抗性について、その主な経過を紹介する。

有機リン剤に対する抵抗性は1981年頃から認められた。第1表に示すように1981年以後、数値の変動があるものの1987年頃をピークとして感受性が低下したまま推移し、その後も高い抵抗性レベルを維持している。

ネライストキシン剤に対する抵抗性は1984年にカルタップ水溶剤(パダン)の感受性検定で確認された。LC50は400ppm以上の値であり、コナガに対して当初から感受性が低かったものと考えられるが、現場では中程度の効果を認める剤として使用されている。

合成ピレスロイド剤に対する抵抗性は1983年に使用を始めて、1~2年後には強い抵抗性が確認された。本剤が登録される以前の防除試験では著しい効果を示したが、1984年以降ではLC50は2,000ppm以上の値となり、防除効果が低下し、この傾向は現在も続いている。

BT剤に対する抵抗性はまだ確認されていない。LC50は10ppm以下の値であり、コナガに対して一番効果の高い主要な基幹防除剤となっている。

IGR剤に対する抵抗性は、クロルフルアズロン乳剤(アタブロン)の使用を開始した1年後の1990年秋には防除効果の低下がみられ、2年後の1991年にはLC50は300ppm以上の値となり、明らかに感受性の低下が認められた。

薬剤名

採集年月

検定世代

処理後時間

LC50

(有効成分ppm)

DDVP乳剤

1981.10

F1-1

24

340

1987.1

F3

24

6,309

トクチオン乳剤

1981.10

F1-1

24

705

1985.3

F1-1

24

4,500

1987.1

F3

24

9,000

1989.11

F3

72

787.9

オルトラン水和剤

1981.10

F1-1

24

1,170

1984.9

F1-1

24

4,823

1985.3

F1-1

24

4,500

1987.1

F3

24

5,599

1989.11

F2

72

408.4

1991.4

F1

72

4,000

1991.11

F1

72

2,426

1992.4

F3

72

2,000

1992.11

F3

72

1,365.3

3.オルトラン粒剤の防除効果

コナガは増殖率が著しく高く、その上に薬剤感受性が著しく低い害虫である。抵抗性の発達したコナガに対する要防除密度の目安は第2図に示す通りである。

第2図 鹿児島県におけるキャベツの生育段階と要防除密度の目安

このような要防除密度を維持するために、定植時の粒剤処理とその後の散布剤を組み合わせた体系防除はその基本的な防除手段である。そこで、定植時に処理した粒剤の防除効果を知るために、オルトラン粒剤を定植1週間前にキャベツの仮植床に処理した時と定植時に株元処理した時の防除効果を第3図に示す。

第3図 オルトラン粒剤処理後のコナガ生息虫数の推移

(注)定植:1989年4月7日
仮植床処理:4月1日
株元処理:4月10日

オルトラン粒剤の仮植床散布(2g/株の割合)は植付後17日目頃(薬剤散布後24日目)からコナガの密度が増加しはじめ、5月15日には無処理区と同密度となった。一方、株元処理(2g/株)は処理後20日までは低密度で経過し、その後増加した。この結果から、オルトラン粒剤のコナガに対する密度抑制効果は処理後約3週間程度と考えられる。

次に定植時の粒剤処理とその後の散布剤を組み合わせた体系防除による防除効果の一例を第4図に示す。

第4図 オルトラン粒剤と散布剤による体系防除のコナガ生息虫数の推移

(注 )オルトラン粒剤区:3月30日オルトラン粒剤株元処理
5月2日アタブロン乳剤、9日アクテリック乳剤、16日トアロー水和剤CTを散布
A粒剤区:3月30日A粒剤株元処理
5月2日ルーバン水和剤、9日アタブロン乳剤、16日チューリサイド水和剤を散布

この試験ではオルトラン粒剤の定植時株元処理(2g/株)は処理後約1カ月間コナガの密度抑制が認められた。密度が増加しはじめた5月2日以降、散布剤による防除を開始し、1週間間隔で3回散布した結果、コナガの発生密度を低く抑えており、コナガの抵抗性が発達した薬剤でも低密度時には密度上昇を抑制する効果が認められた。

この時期のキャベツは定植後約2カ月で収穫となるため、定植時の粒剤処理とその後の散布剤の組み合わせによる体系防除でキャベツの栽培期間中のコナガを上手に防除したことになる。

このような体系防除による防除効果はコナガの発生量の多少により、定植時に株元処理したオルトラン粒剤の残効が20~30日、その後の散布剤による防除回数が3~5回と異なってくる。なお、粒剤の株元処理は処理後に適当な降雨がないと効果が出にくいという問題点もあり、晴天が続くような場合には粒剤の株元処理後に水する必要がある。

コナガの老齢幼虫と蛹
コナガ幼虫による被害(結球初期:左と結球期:右)

おわりに

コナガは増殖率が高く、年間の発生回数も多いために高密度になってからの薬剤防除では密度の回復か早く、防除効果が上がりにくいので、低密度時から早めの防除を行ない。できるだけ遅くまで低密度を維持することが大切である。

(鹿児島県農業試験場)