徳島県におけるナシの病害とその防除

村上 來

- アリスタ ライフサイエンス農薬ガイドNo.78/C (1996.1.1) -

 

 

はじめに

徳島県は西南暖地の赤ナシ産地といわれ、かなり以前より無袋栽培を行なっている。品種は長十郎から昭和40年代の幸水、50年代の豊水が導入され、現在この2品種が定着している。病害では、赤星病、黒星病、輪紋病およびうどんこ病が主要である。他に枝枯病、胴枯病、白紋羽病の病害もかなり重要である。

これら主要病害を防除する薬剤は、昭和20年代には、ボルドー液、昭和30年代にはボルドー液とキャプタン剤、昭和40年代にはボルドー液、キャプタン剤および有機合成殺菌剤、昭和50年以降は、有機(硫黄、塩素系)殺菌剤とベンゾイミダゾール系殺菌剤、昭和60年代~平成になり新しくエルゴステロール生合成阻害剤も防除剤として加えられた。  防除面では、現在手散布防除と労力軽減からスピードスプレヤー防除が多くなっている。防除のために散布回数の多かった昭和60年代以前に比べて現在は、防除効果の高い薬剤の出現もありかなり省力化(減農薬)されている。

 

ナシ栽培の概要

徳島県のナシ栽培は、1993年(平5)の栽培面積317ha(幸水159ha 、豊水110ha、その他48ha)で7,940tの生産量である。栽培面積は1987年(昭62)以降かなり減少が見られる(第1図)。

第1図 徳島県のナシ栽培面積・生産量の年次別推移

ナシ栽培地帯の気象条件は、年平均気温15.5℃~16℃、雨量は1,200mm~1,500mmであり、土壌は傾斜地が和泉砂岩崩壊土、平坦地は旧吉野川流域の沖積土壌である。

平坦地のナシ園が本県の主力産地で、低湿地のため病害の発生も比較的多かったが、客土、暗排水などにより栽培環境が改善されつつある。西南暖地ナシ(平坦地)園として収量は10a当り6~8tとかなり多い。これらはせん定で腋花芽のある枝の利用で増収が計られた。しかし、傾斜地は、10a当り4t程度と少ないようである。栽植距離は、傾斜地平坦地とも4.0×4.0m~4.0×5.0mである。なお棚面より上部に発生した徒長枝の多いのも特徴である。

 

主要病害の発生動向と防除対策

 

徳島県のナシ防除暦に取り上げている病害は、赤星病、黒星病、輪紋病およびうどんこ病が主である。これらの主要病害の発生動向は第1表、第3表のとおりである。

(1)赤星病

耕種的防除として、中間寄主の除去が進みかなり成果を上げている。しかし中間寄主に対して3月中下旬にトリアジメホン水和剤(バイレトン)500倍またはメプロニル水和剤(パシタック)800倍を散布する。なおビャクシン類は薬剤がかかりにくいので、ていねいに毎年散布する。

ナシに対しての薬剤は、雨前散布を行なう。時期として、4月上旬(開花前)にフェナリモル水和剤(ルビゲン)3,000倍と4月中旬(展葉初期)にビテルタノール水和剤(バイコラール)3,000倍を重点防除とし、4月下旬にオーソサイド水和剤600倍(第2表)を散布する。最近の赤星病の発生は、平年並~少発生で推移し防除効果がみられる。最近登録された新しい薬剤として、イミベンコナゾール水和剤(スコア)(黒星病と同時防除)も期待できる薬剤である。

黒星病 葉に発生した病斑(左)と果そう葉病斑

(2)黒星病

耕種的防除としてせん定時に病枝をせん除し、落葉は集めて焼却する。薬剤として脱苞直前散布(第1回重要散布時期)剤はチオファネートメチル水和剤(トップジンM)1,500倍を散布する。前年の多発生園(1988年、1990年に発生がみられた)に対しては、チウラムチオファネートメチル水和剤(ホーマイコート)50倍を散布しチオファメートメチル水和剤の散布はやめる対策を行なっている。鱗片の感染防止のため7月下旬チオファメートメチルトリフルミゾール水和剤(ルミライト)1,000倍と収穫直後散布として9月下旬にキャプタン有機銅水和剤(フジオキシラン)500倍、10月上旬にオーソサイド水和剤600倍を散布する。最近は薬剤効果と天候のため並~少発生で成果を上げている。

4月~7月上旬の使用薬剤として、フェナリモル水和剤、ビテルタノール水和剤、オーソサイド水和剤(第4表)およびジチアノン水和剤(デラン)である。

最近登録された新しい薬剤として、ヘキサコナゾール水和剤(アンビルフロアブル)、ジフェノコナゾール水和剤が防除効果の高い薬剤である。なお1994年の新農薬の効果試験は第5表である。

黒星病 果そう葉病斑

(3)輪紋病(いぼ皮病)

耕種的防除として、枝や幹のイボの除去と、樹勢の安定を計る。せん定枝(イボの多い枝)を園地より遠隔地に運び出し焼却する。

5月~7月の主感染期の薬剤として、オーソサイド水和剤(第5表)、ジチアノン水和剤およびキャプタン有機銅水和剤を採用し、果実への感染防止のため5回程度を散布している。現在の登録薬剤で効果を示す薬剤が少なく、他の病害と同時防除の実施で一応の成果をあげている。

輪紋病 罹病果

(4)うどんこ病

耕種的防除として、落葉を集めて土中に埋めるか焼却する。薬剤散布の時期は、初発生の5月下旬頃にトリフルミゾール水和剤(トリフミン)2,000倍と梅雨明けの7月上旬にトリフルミゾール水和剤2,000倍、発生の多くなる前の7月下旬にチオファネートメチルトリフルミゾール水和剤1,000倍を散布する。なお発生が多くなる8月(収穫後)~9月にトリフルミゾール水和剤かチオファネートメチルトリフルミゾール水和剤を散布する。最近の登録薬剤としてヘキサコナゾール水和剤がある。

うどんこ病 罹病果

(5)枝枯病

耕種的防除として、せん定枝、被害枝は焼却する。側枝の利用には、おそのびした軟弱徒長の枝や太枝をさけ、充実した枝を用いる。排水の悪い園地では、土壌改良を行ない、適正な肥培管理によって樹勢の強化を計る。薬剤としてせん定切り口や病患部の削り取りあとにチオファネートメチル塗布剤(トップジンMペースト)を塗布する。芽枯れ部、枝表皮のさけ目からの侵入防止(生育期中)に他の病害の散布時散布時に主幹と主枝、および亜主枝に散布する。現在登録薬剤がなくこまっている。本病はナシの品種(幼木~成木)のほとんどに発生がみられる。

(6)胴枝病

耕種的防除としてせん定枝、被害枝は集めて焼却する。衰弱した樹に発病しやすいため、土壌改良や肥培管理によって樹を丈夫に育てることが大切である。薬剤防除として、発病初期に健全部を含め病患部を削り取り塗布剤を塗る。またせん定後の切り口も同様に実施する。チオファネートメチル塗布剤、イミノクタジン酢酸塩(ベフラン)塗布剤の3倍液などがある。

(7)白紋羽病

耕種的防除として、新植は無病地を選び、健全苗木を定植する。樹勢を旺盛に保つように肥培管理に注意する。発病の軽症樹は着果を減らし、また発病の中~重症樹には着果させないよう結果枝をせん除する。罹病程度の激しい樹は、被害根の細根まで抜きとり焼却する。その跡地には新しい山土または水田の土を入れて苗木を植付ける。発病樹の薬剤防除は、11月頃に樹幹を中止に半径1m以内を深さ40cmに堀り、成木1樹当りイソプロチオラン(フジワン)粒剤3kg(軽症樹)~5kg(中症樹)の半量を罹病根部にこすり付け、あとの半量を土壌に混和しながら埋めもどす。またチオファネートメチル水和剤1,000培を1樹当り100 (若木)~200(成木)を 灌注しながら埋めもどす対策を実施しているが、毎年同じ処理をしないと発病が進むため困っている。白紋羽病に対しての十分な対策のないのが現状である。

以上、ナシ病害の耕種的防除と薬剤防除について、平成7年度(1995年)防除指針を基に防除対策を述べた。防除には農業安全使用基準を守り、西南暖地の赤ナシ産地として今後も期待したい。(徳島県果樹試験場県北分場)