わが社の誇る除草剤

水田初期除草剤 リーダル粒剤

牛口 良夫

- アリスタ ライフサイエンス農薬ガイドNo.79/B (1996.4.1) -

 

 

はじめに

除草剤を使用した水田雑草防除法としては、スルホニルウレア系混合剤を中心とした、いわゆる一発処理剤の使用が主流と思われるが、カヤツリグサ科多年生雑草のクログワイ等が多発する水田では、一発処理剤の使用のみでは十分な効果が得られず、体系処理を余儀なくされる場合がある。

ここで紹介するリーダル粒剤は、初期除草剤に求められる一般雑草への効果はまちろん、一発処理剤だけでは、防除しにくい多年生カヤツリグサ科雑草のクログワイ、シズイにも有効性が認められ、従来の初期除草剤とはひと味違った変わり種の除草剤といえる。


有効成分、殺草スペクトラム

リーダル粒剤(試験名:YH-3粒剤)は、ジフェニルエーテル系化合物のビフェノックス6%と有機リン系化合物のSAP5%を含有する初期除草剤で、ノビエ、コナギ、タマガヤツリ等の1年生雑草をはじめ、マツバイ、ホタルイ、ヘラオモダカ、ミズガヤツリ、クログワイ、シズイ等の多年生雑草にも有効性が認められ、第1表に示した適用雑草と使用法で農薬登録を取得している。

今回は、特に従来剤と違った特徴を示すクログワイについて、いくつかの効果試験結果をもとに、ご紹介する。

作物名

適用雑草名

使用時期

適用土壌

10a当り使用量

総使用回数

使用方法

適用地帯

水田1年生雑草及び、マツバイ、ホタルイ、ヘラオモダカ 移植直後~移植後7日[ノエビ1葉期まで] 壌土~埴土[減水深2cm/日以下]

3~4kg

本剤のみ1回

ビフェノックス剤2回

SAP剤2回

湛水散布

北海道

水田1年生雑草及び、マツバイ、ホタルイ、ヘラオモダカ、ミズガヤツリ、クログワイ、シズイ(東北)

東北・北陸

水田1年生雑草及び、マツバイ、ホタルイ、ミズガヤツリ、クログワイ 砂壌土~埴土[減水深2cm/日以下] 関東以西の普通期及び早期栽培地帯(九州を除く)
水田1年生雑草及び、マツバイ、ミズガヤツリ、クログワイ 壌土~埴土[減水深1cm/日以下] 九州の普通期及び早期栽培地帯

第1表 適用雑草と使用法



クログワイに対する効果

(1)殺草限界

第1図はクログワイの殺草限界につき検討したポット試験の結果である。

発生前処理では、SAP、ビフェノックス単剤、リーダルとも、非常に高い効果が認められ、クログワイを枯死した。一方、発生後の処理では、草丈2cm処理のビフェノックス単剤区で、極くわずかながら残草が認められ、最終調査時には再生する傾向にあり、単剤での枯殺限界は、これ以下にあるものと思われる。SAP単剤およびリーダルでは、草丈4cm 処理でも効果は高く、両剤とも枯死寸前にまで至った。草丈9cm処理では、両剤ともクログワイを枯死するには至らないが、SAP単剤に比べ、リーダルで優れる結果となり、有効成分投下量が単剤に比べ下がっているにもかかわらず、リーダルでは高い効果が認められ、混合効果を示すことが確認された。

以上の結果から、リーダル粒剤は草丈9cmまでのクログワイに対し、高い効果が認められるが、枯死限界としては、発生前~草丈数cmまでと考えられる。


クログワイ
第1図 殺草限界

(2)発生深度別効果

ところで、クログワイ防除を難しくする要因の一つに、発生深度の問題がある。クログワイは他の一般雑草に比べ、より深い土中からも発生が可能で、多発条件下では、これらをどうたたくかが防除上のポイントとも言える。

第2図および第3図は、クログワイの発生深度を0、5、10cmと変え、効果への影響を検討した。ポット試験の結果である。

第2図 発生深度別効果(発生前処理)

第3図 発生深度別効果(草丈5cm処理)

発生前処理での結果をみると、発生深度0cmでは、いずれの供試剤ともほぼ完全な効果を示したが、5cm、10cmと発生深度が深くなるにつれ、供試剤により異なった結果を示し、SAP単剤では、明らかに効力が低下する傾向が認められた。これはSAPの作用特性上、薬剤吸収が主に根部から行なわれる為、今回のような無漏水条件下では下方移行が少なく、発生深度が深くなるほど、薬剤吸収がされにくかったためと思われる。ビフェノックス単剤では、SAPに比べ明らかに発生深度の影響をうけにくい傾向にはあったが、発生深度10cmでは十分な結果が得られなかった。一方、リーダルでは、各成分単剤に比べ効果は高く、混合化によるメリットが、こういう点でも確認された。

なお、草丈5cmの処理では、発生前処理に比べ全般に効果が低く、特に5cm以上の深さから発生したクログワイに対しては、リーダルでも十分な効果が得られない結果になっている。

したがって、リーダル粒剤といえども発生深度が深い場合には、殺草限界付近での処理では、効果が不十分になる可能性があり、発生前に処理することがより効果的と考えられる。


(3)残効性

もうひとつ重要なことに、残効性の問題がある。第2表は、クログワイの発生前に薬剤処理を行ない、経時的に除草効果を観察し、抑草期間(未発生期間)がどのくらいになるのかを検討した圃場試験の結果である。

処理時期

調査時期(薬剤処理後日数)

除草効果

ビフェノックス粒剤

リーダル粒剤

3kg/10a

2kg/10a

3kg/10a

4kg/10a

発生前

22日

●~◎

32日

○~□

●~◎

46日

×

□~△

除草効果:●枯死(未発生)◎極大○大□中△小×なし
供試薬剤:ビフェノックス粒剤(ビフェノックス7%)リーダル粒剤(SAP5%+ビフェノックス6%)

第2表 残効性

この試験で、ビフェノックス単剤7%、3kg/10a処理では、およそ15~20日の抑草期間を示した。一方、リーダルでは、2kg/10a処理で20~25日、4kg/10a処理で35~40日とビフェノックス単剤に比べ、いずれの処理量でも抑草期間は長く、もうひとつの混合成分であるSAPがうまく機能していることがうかがえる。

以上、リーダル粒剤のクログワイに対する効果について、作用特性を中心に、各成分単剤との比較でご紹介したが、リーダル粒剤活用にあたり、少しでもご参考になれば幸いと考える。

なお、現在市販されているリーダル粒剤は、10a当りの標準使用量が3kgの、いわゆる3キロ剤であるが、これを軽量、コンパクト化した1キロ粒剤(10a当り使用量が1kg)も開発中であり、近い将来新メニューとして、ご提供できるものと考えている。

(八洲化学工業(株)研究所)

ノエビ

タマガヤツリ

コナギ

マツバイ

ホタルイ

ミズガヤツリ