施設用遮光剤レディソル特集

- アリスタ ライフサイエンス農薬ガイドNo.88/D (1998.7.1) -

 


 


 

■マンゴーにおける使用例

はじめに

沖縄県で栽培されているマンゴーの大部分は、フロリダで育成された品種"アーウィン"(Irwin)で、結実性が良く7~8月に収穫される早生種である。果皮は鮮紅色で果肉に繊維が無く、芳香がありマンゴー独特の臭いが少ないため、日本人にも適した品種といえる。また、果皮が薄く柔らかいため、沖縄の強烈な日差しの下では、果実に日焼け症が発生しやすい(写真)。一方、十分な光が必要であるため日焼け症を発生させず紅色をのせるための管理法が必要である。通常の栽培では、開花期に花房をつり上げることで、着果の促進と幼果期から光が当たるように受光態勢の改善を図り、その後、肥大期には果実ごとに玉つりを行なう。紫色が十分乗った頃果実に袋掛けを行なう。通常は、梅雨明け前後になる。袋掛けが遅すぎると、日焼け等で落果・品質低下を招く。更にこの時期は、施設内の日中の温度はかなり高く、袋掛け作業は重労働となるため、作業性がよく、効果的な日焼け防止法が求められている。

そこで、今回は日焼け症防止のため、オランダ・マーデンクロ社の施設用遮光剤レディソルを利用した事例について紹介する。

 

概要

1)試験方法

1997年6月に、12年生マンゴー(品種:アーウィン)栽培施設の一部で試験を行なった。レディソル(20kg)を水で希釈し合計100lにして、酢ビ被覆の施設の屋根に動噴(ジェット噴孔)で散布した。対照は、同施設の無散布区(袋掛け、無袋)とした。調査は、散布後および10日後の遮光率の変化および果実表面温度について行なった。

2)経過

散布時間は、200平方メートルで約6分と効率がよい。散布後の遮光率は、55%程度で10日後に行なった測定でもほとんど遮光率の低下は見られなかった(第1表)。今回の試験では、いずれの試験区でも、日焼け症の発生はほとんど見られなかったが、日焼け症に最も関連があると考えられる果実表面温度は、袋掛けに対し約2度(摂氏)、無袋に対して約4度(摂氏)低く、袋掛けより降温効果が高いので、日焼け防止に有効であると考えられた(第2表)。

8月7日および8月16~17日にかけて、台風の接近があり、レディソルは、ほぼ完全に剥がれ落ちた。それまでの果実の着色状況は、通常管理に比較して差がなかった。

  7月12日 7月22日
照度(klux) 遮光率(%) 照度(klux) 遮光率(%)
施設外 110 0.0 98 0.0
施設内 82 25.5 77 21.4
レディソル 48 56.3 44 55.1
第1表 レディソルの遮光効果
*AM11:30~12:00に測定

  果実表面温度
無袋 摂氏44~48度
有袋 摂氏44~46度
レディソル 摂氏40~42度
第2表  果実表面温度
*7月22日 PM2:00~2:30に測定、ハウス温度摂氏38度

 ▲

マンゴーの着果状況
 ▲

マンゴーの日焼け症

 

まとめ

今回の試験では、レディソル散布による、日焼け防止効果は明らかではないが、果実表面温度が袋掛けよりも低くなることから、かなりの効果はあるものと予想された。また、マンゴーの光合成速度は、光が十分な条件下では、高温が制限となるため、レディソル散布区の方が適していると予想される。着色状況も通常管理と変わらず良好であることから、効率的に日焼けを防ぎつつ果実外観品質を向上させる資材として、有効と思われる。しかし通常の降雨では落ちないものの、台風やそれに伴う豪雨には、耐久性の面で問題があった。

レディソルのみでの日焼け症対策は、今回の処理法では困難である。マンゴー栽培に用いる場合には、付着力を高めるための処理濃度の検討や、台風接近の確率が低い6月までに収穫がほぼ完了する加温栽培での利用、無加温栽培では、袋掛けの前に予防的あるいは補助的に利用するなど用途を限定する等の処置が必要である。また、今回の試験は同一施設内で行なったため、直射日光が妨げられるため体感的にはかなり低く感じ、作業環境の改善には有効であった。 (玉城聡:沖縄県農業試験場名護支場)

 

■レディソルの遮光効果について

1.はじめに

沖縄県では夏場における高温・乾燥・強日射による作物の被害が多く発生する。そのような中で、夏場に適した強日射対策の農業資材の検討など、夏場野菜の問題解決を行ない安定生産を検討している。

 

2.試験の概要と経過

試験地は沖縄県島尻郡知念村知念の圃場で行なった。この圃場はH鋼ハウスが事業導入されており、ピーマンの品種は京ゆたかで定植が3月15日、収穫はじめが5月中旬であった。レディソル散布に関しては、平成9年7月3日に1回のみ行なった。試験区としてレディソル散布区を設定し慣行区として従来から遮光資材として利用していた青のダイオネット区と白の防風ネット区および被覆なし区を設定した。希釈倍率は規定通り1缶に対して30l水を混ぜて行なった。

 

3.試験結果について

レディソル散布は平成9年7月3日に行ない、レディソル散布調査は7月6日、午前11時30分に行なった。試験調査は遮光効果について行なった。

1)遮光効果について

遮光効果についてはデジタル照度計DX(科学共栄社)を用いて行なった。
レディソル散布区は被覆無し区に比較して約55%~58%の遮光率となった。また、慣行区の青のダイオネット区は33~34%の遮光率となった。慣行区の白の防風ネット区は32%の遮光率となった。
レディソル散布区では平均で56.5%と遮光率があった。
以上の結果から夏場ハウスにおける強日射抑制に効果はあることを実証した。

しかし、所によっては、散布むらがあった。また、8月13日から14日に台風第13号が沖縄地方に接近し、最大瞬間風速51.4m/sの強風と降雨によってレディソルがはがれ落ちてしまった。

 

4.最後に

レディソル散布試験に関して、遮光効果は、従来使用している被覆資材の青のダイオネットや白の防風ネットより、遮光効果はあると認められるが、普及にあたっては、次の検討課題が考えられた。

  1. 台風時におけるはがれ対策。
  2. 台風や前線を伴う低気圧の影響で曇天の日がたびたびあるがそれらの日照対策。

レディソル散布の遮光効果は、周辺農家の関心は高く、先ほど記述した問題点を解決できれば、夏場における野菜栽培が可能になり、収量増加、品質の向上が期待できる。

(宮城明生:沖縄県南部農業改良普及センター)