アリスタIPM通信 微生物農薬と化学農薬との混用による効果の向上
 
 
微生物農薬と化学農薬との混用による効果の向上
 

微生物を用いた病害虫の防除方法、特に昆虫病原性糸状菌を用いて害虫を防除する方法として、ボタニガードES(ボーベリア バッシアーナ菌)、マイコタール、バータレック(バーティシリウム レカニ菌)が市販されています。

これらは単独でも、チョウ目、甲虫目、カメムシ目、アザミウマ目などの害虫防除に用いられていますが、近年化学農薬に抵抗性が発達したコナジラミ類やアザミウマ類に対して化学農薬とともに混用することで効果が向上することが明らかになってきました。これらの糸状菌は害虫の体表面に胞子が付着し、発芽後に菌糸がその体内に侵入して感染が起きます。このため短期間に脱皮を繰り返す微小害虫では脱皮により付着した胞子が脱落してしまいますがIGRなど脱皮阻害剤との併用で効果を向上させることができます。また、菌糸の体内への侵入においても抵抗性が既に発達した薬剤も含め多くの殺虫剤との併用は害虫の通常の機能を麻痺させるので、感染力が向上します(下表)。

このように混用して使用することは、害虫の抵抗性発達を回避する手段として有効です。生物農薬を利用したIPMプログラムだけではなく、慣行防除による害虫管理を実施している生産現場でも抵抗性発達で効き目が悪くなったと感じられたら、一度利用されるとよいでしょう。

 

以下は、弊社内試験結果です。試験概要は以下のとおりです。
薬剤抵抗性ミナミキイロアザミウマ3令幼虫に対してボタニガードESの500倍、1000倍、2000倍を虫体浸漬法で処理し3日後の死亡率を調べました(下表「ボタニ単用」欄参照)。

一方で各種化学合成殺虫剤の効果が発現される濃度を用いて単独で同様の試験を行ないました(下表「農薬単用」欄参照)。さらにボタニガードESの各濃度を各種化学合成殺虫剤の各濃度と混用して同様の試験を行ないました(下表「混用」欄参照)。

混用した場合の対象害虫の死亡率が各単独の死亡率に比べて高く発現された組み合わせを赤文字で示しています。各種組み合わせで単独の処理よりも混用の方が死亡率は高くなりました。また、マイコタール水和剤でも同様のことが報告されています(「技術と普及」2009年1月号/p 23-25)。但し、混用に際しては作物、散布時期など予め薬害の恐れに気をつけてご使用下さい。

 
微生物農薬と化学農薬との混用による効果の向上
 
 
※2009年10月28日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。