アリスタIPM通信 北海道におけるブロッコリーの花蕾腐敗病に対する『ベジキーパー水和剤』の普及
 
 
北海道におけるブロッコリーの花蕾腐敗病に対する
『ベジキーパー水和剤』の普及
(シリーズ  露地作物におけるIPM成功事例 第一回)
 
 
1. 北海道のブロッコリー栽培
ブロッコリーは夏場の最高気温が低い地域性に合った作物として、また消費者の食の安全・安心から国産への需要が高まっていることも相まって近年 北海道における作付地域、面積とも増加の傾向が著しい。
全国における作付面積の増加が平成2年を100 (8,800ha)とすれば平成22年で152%(13,400ha)なのに対し、北海道のそれは511%(2,420ha 、全国シェア約18%)に達する。 生産地は十勝地方(音更町)、上川地方(東川町・士別市)、石狩地方(江別市・石狩市・新篠津村・千歳市)、空知地方(長沼町・南幌町)、胆振  地方(伊達市)、北見地方(湧別町)など全道各地に展開しており、産地の拡大が続いている。(24年度北海道野菜地図―北海道農業協同組合中央会編)


2. 重要病害は「花蕾腐敗病」
病害は花蕾腐敗病が最も深刻であり、7月下旬から8月中旬に花蕾が形成される作型で発生が多い。
これまで銅水和剤が指導されてきたが、夏季高温時の散布や連続散布では薬害の危険性もあり、 ベジキーパー水和剤は待望の剤であった。


3. 「北のクリーン農産物表示制度」
北海道では農薬や化学肥料の投入量を削減して生産された、よりクリーンな農産物について「イエス!クリーン」という名称で北海道クリーン農業推進協議会が農産物表示制度を制定しその推進に努めている。
ベジキーパー水和剤はレタス健全葉から分離した、非病原性のシュードモナス フルオレッセンスG7090株をセントラル硝子(株)が製剤化したものであり、農薬使用にカウントされない安全性の高い農薬ということからも、時代にマッチした薬剤として「イエス!クリーン」登録生産集団からも歓迎されている。


4. 現地での普及
さて現地での普及においては、ベジキーパー水和剤の特徴を、指導層の方々はもちろん農家の方々へもよく知らしめることが重要なことは言うまでもないことだが、この剤の普及に関しては銅水和剤をはじめとする細菌性病害剤にない厄介な問題への対応、理解の向上が必須となってくる。
花蕾腐敗病を引き起こす病原菌は複数の細菌の関与が知られているが、寒地においては主にシュ―ドモナス菌が関与することが知られており、北海道植物防疫協会が編纂した『北海道病害虫防除提要』にも、「病原細菌は複数種が関与するが、病原細菌の違いによる症状の違いはない。エルビニア菌による腐敗で高温多湿条件になると、まれに花茎へ病斑が進展する場合が認められる」としており、現場の指導員とこの点は十分以上に理解を得る必要がある。軟腐病を警戒する声の大きい現場では、花蕾形成前までの銅水和剤と、花蕾形成極初期からのベジキーパー水和剤とのローテーション防除を勧めるのが効果的と考えられる。

また、細菌病と糸状菌による病害防除の違いについても、きっちりとしたメッセージを普及センターなどの指導層から農家に届けることが大切なことだ。つまリ、細菌病においては細菌の増殖速度がけた違いに早いので、菌に対する作用性の違いはあっても予防的な散布が求められるところであり、「ベジキーパー水和剤だから早目に散布しなければ効果がない」というイメージの払拭が必要だ。
そのための手段の一つとして普及センター・農協とタイアップした展示圃試験の設営が生きてくるものと考えている。
道南地方で行った展示圃試験では、花蕾の伸長が想定したよりも早く必ずしも適期散布とはならなかったり、発病が少なく期待した成果が得られないなど、結果は必ずしも満足できるものではなかった。しかし農協の提案でブロッコリー部会の有力農家で10か所程度の試験区を設営し、2010年の地区暦採用につながった。
 
 
 
※2012年7月30日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。