アリスタIPM通信 オオバのハダニ類に対するIPM防除について
 
 
オオバのハダニ類に対するIPM防除について
 
施設栽培のオオバは愛知県が主産地となり、農業法人による大型ハウスでの栽培も各地で行われています。基本的には周年栽培で、4月または9月頃に定植して8~9ヶ月間収穫します。収穫期間が長いため、一度病害虫が発生すると長期間居座ることになり、防除回数が増える要因となります。また、葉が製品となり、少しでも害虫による食害痕がついていると商品価値が落ちるため、徹底した防除が行われています。しかし、登録薬剤が少なく、登録があっても収穫前日数が長い薬剤が多く収穫期間中に使いづらい上に、薬剤抵抗性の発達もあることから、IPM防除の確立が望まれています。

害虫の発生状況は地域によって異なっており、愛知ではハダニ(写真1)が問題となっていますが、高知やその他地域・農業法人等ではチャノホコリダニが重要害虫となっています。
今回は、ハダニ防除を中心としたIPM防除体系について話題提供いたします。


ハダニ防除を中心としたIPM防除体系について
定植後、隣の株と葉が重なる少し前に天敵を放飼するために、定植1か月後を目処にゼロ放飼のための薬剤散布を実施します。影響日数の短いものが良いため、コロマイト乳剤や気門封鎖剤などを散布、次に天敵、スパイカルプラス(またはスパイカルEX)を放飼します。コロマイト乳剤を散布して1週間後が放飼時期となるので、納品日を考えて早めに注文してください。もし、コロマイト乳剤を散布してもハダニが減らない場合は、気門封鎖剤を放飼1日前までに散布してください。

オオバのハダニ類に対するIPM防除について
スパイカルプラスは、写真3のようにオオバの枝に吊り下げます。直射日光がパックに直接あたるのを避けるため、なるべく日陰になるような場所に設置します。
基本量は100パック/10aですので、3~5mに1個設置することになり、隙間が空くことになりますが、ゼロ放飼ができていれば、ミヤコカブリダニが徐々に広がっていきますので、ハダニが発生してもスポット状に抑え込むことができます。ハダニがスポット状に発生した場合、ミヤコカブリダニの活動により広がるのが遅いため、カネマイトフロアブル等でレスキュー防除を入れた後、発生箇所(2~3カ所)にスパイデックス1本を分けて放飼するのが有効です。

散布薬剤を天敵に影響の少ないものに変更するとこれまで問題視していなかった害虫が発生してきます。例えば、アブラムシ。オオバのアブラムシ(写真4、 5)は収穫する生長点に近い葉に発生し、アブラムシが発生すると葉が巻いてしまい、商品価値がなくなってしまいます。アブラムシに対してはウララDFやスタークル/アルバリン顆粒水溶剤を散布します。
オオバのハダニ類に対するIPM防除について
 
また、モトジロアザミウマ(写真6)やミナミキイロアザミウマが発生します。こちらに対しては登録薬剤も少なく、天敵に影響があるものが多いため、スワルスキープラス(写真7)を放飼し、粘着板ホリバー・ブルー及びイエロー(写真8)を設置することで成虫密度を下げることで、アザミウマ数は少なく推移します。なお、粘着板はオオバの生育に合わせて高さを調整するようにします。
 
オオバのハダニ類に対するIPM防除について
さて、天敵を放飼すると害虫の密度が下がってきます。すなわち天敵の餌が少なくなってきます。他の作物では花粉を代替餌として生きながらえることが可能なスワルスキーカブリダニも、オオバの場合は花がなく、代替餌が少なくなります。そこで定期的な追加放飼が必要となってきます。目安として最初の放飼から1.5~2ヶ月後、薬剤でレスキュー防除を入れた後にスパイカルプラスやスワルスキープラスを追加放飼します。周年栽培ですので、この後も適宜追加放飼が必要です。


以上、薬剤散布で害虫密度を下げた後、天敵を放飼するのは 他の作物と同様ですが、代替餌不足による天敵の減少が考えられますので、オオバでは追加放飼が必須です。天敵を導入すると薬剤散布回数を減らすことができますので、日ごろの観察により追加放飼の時期を見極めていくことが重要となります。オオバは葉を収穫するため、被害葉があればすぐに発見できると考えています。少しでも被害が認められれば、天敵に影響の少ない薬剤でレスキュー防除を入れたのちに追加放飼を実施する、これが基本的なIPM防除になると考えています。

 
 
※2013年10月25日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。