アリスタIPM通信 スパイカルプラスの果樹での利用Ⅱ ~オウトウでの利用場面の検討~
 
 
スパイカルプラスの果樹での利用Ⅱ
~オウトウでの利用場面の検討~
 
スパイカルプラスは果樹類に対して2013年1月に登録を取得しました。登録から1年が経過し、新たな展開を考えています。第15号の特集記事ではハウスブドウと露地なしでの利用を紹介し、露地で使用する場合の注意点を記載いたしました。今回はオウトウでの利用場面を考え、山形県園芸試験場の協力で試験を実施しましたので、概要を報告いたします。

まず、考えなければならなかったのはオウトウショウジョウバエの防除に使用されている合成ピレスロイド剤(以下:合ピレ)です。合ピレは、カブリダニ類に対する影響日数が長く、ミヤコカブリダニ放飼前に使用するためには影響日数を明らかにしなければならず、また、放飼後は使用できないというデメリットがありますが、オウトウ栽培には必須の薬剤であるため、どのような組み合わせで天敵を利用した防除に組み込んでいくのかを考えなければなりませんでした。

そこで、山形県園芸試験場と相談したところ、収穫後のハダニ防除で使ってみてはどうかという案が出てきました。すなわち、オウトウショウジョウバエ防除に合ピレを使用して約1ヶ月後にスパイカルプラスを設置し、収穫後に発生して翌年の収量に影響を及ぼすおそれのあるハダニ類を防除する目的で利用しようという案です。オウトウショウジョウバエの防除は果実にめがけて薬散するので、葉裏の天敵への影響日数は短くて済むのではないかという考えもあってのことです。また、スパイカルプラスはパックから徐々に放出される徐放性の製剤となっていたこともこの使用方法に合致したものでした。近年のオウトウショウジョウバエの防除は合ピレだけではなく、ミヤコカブリダニに対して影響の少ないネオニコチノイドやジアミド系の薬剤も使用されていることも幸いでした。

以下に試験概要を示します。

■試験場所:山形県農業総合研究センター 園芸試験場内
■供試作物:オウトウ
■供試薬剤:スパイカルプラス
■放飼日:2013/7/23
■放飼量:3パック/樹

スパイカルプラスの果樹での利用Ⅱ ~オウトウでの利用場面の検討~

試験期間中は降雨量、降雨頻度ともに例年より多く、ナミハダニの増加に不適な気象条件でした。

調査方法
各区より新梢中位葉から任意に選定した100葉と徒長枝50葉に寄生するナミハダニの成幼虫数および天敵のカブリダニ類の成幼虫数をルーペで調査し、防除効率を算出しました。
ナミハダニの寄生密度が減少したため、効果は放飼23日後までで判断しました。

スパイカルプラスの果樹での利用Ⅱ ~オウトウでの利用場面の検討~
 
結果のまとめと今後のすすめ
•オウトウの収穫後のハダニ防除を目的として効果試験を実施しました。
•スパイカルプラス処理区は無処理区と比較してハダニ密度を抑制し、処理区ではミヤコカブリダニの定着を確認できました。
•テルスターフロアブル4000倍は放飼4週間前であれば問題なく使用できることが判明しました。
•無処理区ではカブリダニは観察されませんでした。
今後は、テルスター散布4週間後を目処にスパイカルプラス放飼の実証圃試験を展開し、オウトウのハダニ防除でのポジションを確立していきたいと考えています。
なお、可能であれば、生育期の雨よけ時のハダニ発生時期での利用についても検討していきたいと思います。
 
 
※2014年4月15日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。