アリスタIPM通信 バラのIPM防除について
 
 
バラのIPM防除について
 

IPM防除はスワルスキーやスパイカルEXを主幹防除に用いることができる果菜類を中心に普及が進んでいます。 一方、花き類への普及は難しいと考えられていました。その最大の理由は薬剤散布回数の多さです。品質を保持するために徹底防除がされているというのが一般的な印象だと思います。そこにマイルドな効果の天敵を使ってくださいなどと言うことはできないと考えていました。

ところが、生産者の中には全く逆の発想の方がかなり多くいることがわかってきました。すなわち、薬剤散布回数を減らせる技術があれば、喜んで取り入れたいという要望です。薬剤散布はパートの方に任せるわけにもいかず、ご主人が担当するのが一般的です。生産者の高齢化もありますが、後継者である若者も重労働は避けたいと考えており、散布労力の軽減が求められています。

そのような中、オランダKoppert社の技術担当者から、オランダではバラ栽培に天敵を取り入れることで、労力軽減のみならず、増収・品質向上が確認されており、バラ栽培でのIPM防除利用者が急増しているとの話がありました。(写真1, 2)

バラのIPM防除について
 
オランダでは、なぜ天敵を利用することによって増収・品質向上につながったのでしょうか。
バラ栽培ではアーチング栽培が主流の栽培方法となっており、ハダニは収穫するシュートよりもアーチングで下に広がっている枝葉に大量に発生しています。(写真3, 4)
バラのIPM防除について
バラのIPM防除について
そこで、生産者はハダニ防除に関しては大量の水を使います。多い人では10a当り1,000ℓ以上の散布をすると聞きました。この大量の水が栽培環境を悪化させているのではないかという話があります。ハウス内の湿度が高くなるとともに、薬剤によるストレスがバラにかかります。(薬剤散布で葉に薬害が発生しやすいことからもストレスがかかっていることが推察できます。)そして、高湿度とこのストレスにより気孔の開閉が少なくなることで、葉からの蒸散量が減少します。蒸散量が減るということは根からの水分および養分吸収が減ることになります。ということはバラの生育が抑制されると考えられます。

では、逆にハダニ防除による大量の水の散布がなくなるとどうなるでしょうか?
葉からの蒸散量が増加し、根からの水分および養分吸収が増加することになりませんか?それだけでかなりの改善効果が認められそうです。オランダのバラ栽培でIPM防除が広まっているのは、上記の理由からです。すなわち、散水量が減ったことによるバラの蒸散量の増加に伴う増収・品質向上です。実際にバラ栽培で天敵を利用してうまくいっている日本の生産者は、「養液の減りが早くなった。」「市場で品質がいいと言われた。」という話をしてくださいます。

さて、実際のバラでのIPM防除ですが、大きな問題があります。それは、バラ生産者のほぼ全員がペンタック水和剤を使用しており、この剤の天敵に対する影響が非常に長いことです。具体的に言いますと、ペンタック水和剤を散布した場合、最低でも2ヶ月間天敵を使うことができません。この2ヶ月間をいかに過ごすかが最大のポイントとなります。

ここで、弊社が現在考えているバラのIPM防除についてお話しいたします。

前述のように、ペンタック水和剤が定期的に散布されていますので、天敵を入れるに当たっては、ハダニが少なく、ペンタック水和剤の散布頻度が少ない時期から放飼すべきだと考えております。そこで以下の時期を考えています。

・ 害虫が少ない11月にペンタックを散布して2月頃に天敵を放飼、その後定期的に追加放飼。

このために、次頁の流れで年間の防除を考えています。


ペンタック水和剤を11月に散布

天敵に対する影響日数を考えた殺ダニ剤のローテーション防除(※)を
2月まで実施
(その他の病害虫に対しても天敵に影響の短い薬剤を使用)

放飼直前に気門封鎖剤を散布

2月にスパイカルプラスを設置すると同時にスパイデックスを放飼

観察しながら必要に応じてレスキュー防除

月に一度スパイデックスの追加放飼(ハダニがいなければ見送る)

観察しながら必要に応じてレスキュー防除

5月中旬(母の日の後)にスパイカルプラスを追加放飼

月に一度スパイデックスの追加放飼(ハダニがいなければ見送る)

観察しながら必要に応じてレスキュー防除

8月中旬(お盆の前後)にスパイカルプラスを追加放飼

月に一度スパイデックスの追加放飼(ハダニがいなければ見送る)

観察しながら必要に応じてレスキュー防除

ペンタック水和剤を11月に散布


※ 天敵の影響日数を考えた殺ダニ剤のローテーション候補剤と影響日数
影響60日:ペンタック など
影響30日:ダニカット、サンマイト、バロック など
影響21日:ダニトロン など
影響14日:コロマイト など
影響 7日:アファーム、花華やか など
影響 1日:サンヨール、粘着くん、ムシラップ、エコピタ など
影響 0日:ダニサラバ、スターマイト、カネマイト、ニッソラン、カスケード など

バラのIPM防除で天敵の利用はハダニ防除が中心となりますが、その他の病害虫の防除も重要です。IPM防除というからには天敵を利用するだけでなく、その他の防除法も利用します。アザミウマ類に対してはホリバーをお勧めしています。中には、こんなにたくさんのホリバー(写真7)を下げてくださる方もいらっしゃいます。この方のお話では、ホリバーをこれだけ吊り下げておけば、アザミウマ防除がかなり楽になるそうです。

ハウスの周りですが、スリムホワイト30(写真8)などを用いてアザミウマ類の侵入を抑えることも重要です。更にスワルスキープラスを設置すればコナジラミ類が発生した場合でも慌てることなく対処可能となります。これも散水量を軽減させる資材の一つです。

バラのIPM防除について
 
うどんこ病に対しても散水量を減らしていくことを考慮して、イオウのくん煙装置の導入をお勧めいたします。イオウはヒートポンプやビニールの寿命を短くするそうですので、注意が必要です。

さて、ここまで盛りだくさんで話を進めてまいりましたが、結局はバラの病害虫防除にIPM防除を取り入れることは不可能ではないということです。さらに増収・品質向上にも役立つというのですから、今後は増収・品質向上に関する試験事例を重ね、より労力削減に貢献するためにどうすればいいのかを考えていきたいと思います。


 
※2014年4月15日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。