アリスタIPM通信 【海外ニュース】スペインの天敵利用の現状について
 
 
【海外ニュース】スペインの天敵利用の現状について
 
和田 哲夫
 
 
南ヨーロッパはオランダに比べ、日本に気候条件は比較的近いものがあります。
2006年以降、スペイン南部および東南部でのトマトとパプリカでの生物的防除の成功には目を見張るものがあります。天敵利用を中心とするIPMが急激に増加した理由して以下の理由が挙げられます。

1.EUにおけるより厳しい農薬登録制度による登録農薬数の減少(50%以上減少)とドイツやイギリスなどのスーパーマーケットチェーンからのより厳しい野菜での作物残留値要求(EUでの残留基準より厳しい独自の基準)や、中国から輸入された無登録農薬の作物残留発覚事件。化学農薬の効力低下も顕著になってきています。

ドイツでのパプリカなどの農薬分析結果によれば、2006~7年にはMRL(最大残留基準値)以上の残留があったスーパーマーケットの野菜で35%もあったが、2007~8年には残留値オーバーの野菜は0%となり、なおかつ残留値分析限界以下(残留なし)の比率が6%にも上昇しています。
さらに、土着かつ植物と害虫の両方を食べる天敵の開発があります。


2.トマトのタバココナジラミ及びトマトキバガにたいしてタバコカスミカメが使われるようになった。(TYLCVも育苗段階からの放飼及び抵抗性品種などで発生が激減している)もちろん、スワルスキー(スワルスキーカブリダニ)の登場もきわめて重要です。


3.パプリカのタバココナジラミとミカンキイロアザミウマに対して、スワルスキーとタイリク(タイリクヒメハナカメムシ)が利用されるようになりました。


4.その他、多くの種類の天敵の実用化 チチュウカイツヤコバチやカブリダニ類など。

植物と害虫を摂食する天敵は害虫発生前に、植物と害虫のどちらでも摂食することができるため、植物体上で十分な頭数が定着することができる。そのため、まだ被捕食者の頭数が少ないときにでも安定した定着を示します。(作物を食害するタバコカスミカメが日本で登録されるかはいまだ不明です。)

現在スペインのパプリカ 9,300ha、トマトの8,000ha の大部分(90%以上)において、これらの多食性の天敵類が利用されています。もちろん世界で一番天敵を利用する面積は大きくなりました。日本は現在、世界で5番目くらいで、アジアでは一番普及率が高いという現状です。

 
 
 
※2014年4月15日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。