アリスタIPM通信 施設カンキツにおける天敵を利用したIPMプログラムの検討
 
 
施設カンキツにおける天敵を利用したIPMプログラムの検討
 
 
 
スワルスキーカブリダニのミカンハダニに対する適用拡大が行われてから、果樹、特に施設ミカンでの天敵を利用したIPMプログラムの技術確立が始まった。
同時に(一社)全国農業改良普及支援協会による農業システム化研究会IPM実証調査の課題として佐賀県、大分県(平成22年から3ヵ年)、愛知県(平成24年から3ヵ年)で技術実証が検討されてきている。
●施設ミカンでの天敵利用の取り組みの経緯
「技術と普及」2013年1月号(P.56)、同2014年1月号(P.56)にも施設ミカンでの愛知県、佐賀県の取り組みが紹介されており、地域における課題が述べられているが、それらを含め現状で解決すべき問題として以下のような点が挙げられる。

☆薬剤感受性低下によるミカンハダニの発生
☆施設内薬剤防除(動噴を用いた手散布)にかかる労力の負荷と経営面での負担
☆防除作業増加による剪定作業など管理時間の減少、樹木の繁茂、それによる品質の低下
☆輸出用としての農薬残留基準値の低減化

これらの課題を解決するために、ミカンハダニ防除において天敵利用を基幹とした防除プログラムを構築し、現地で受け入れられる実証試験を蓄積してきた。
また、取り組みの過程でスワルスキーについてはボトル製剤のコーヒーフィルターを用いた放飼から、パック製剤(スワルスキープラス)の新規登録により作業の簡便化も図ってきている。


★天敵利用を基幹としたIPMプログラム実証のポイント

天敵利用を基幹としたIPMプログラム実証のポイント
① 加温開始後に一度殺ダニ剤で、ハダニ密度を低下させておく。

② 地域・個別ハウスに合わせるが、できれば開花時期に合わせてスワルスキープラスを放飼する。

③ スワルスキー放飼1ヵ月後を目安に圃場を調査し、ハダニの目立った増加が見えたら、この時期にダニサラバ或いはスターマイトなど天敵に影響の少ない殺ダニ剤を1 回だけ散布しておく。

④ ハウス開放時期が来ると外部からのアザミウマが侵入するので、アザミウマ防除を中心にした防除体系に移行する。もちろんネット設置などでアザミウマ侵入時期をなるべく遅らせることができれば、さらに省力的なIPMプログラム体系を維持して行くことが可能となる。

年間を通じた作物管理上でのIPMプログラムを組み立てる以前に、加温後から施設側窓を開放する時期までに殺ダニ剤の散布回数を削減することを実証する試験を組み立てて進めてきた。結果として、平成22年より進めてきた中で徐々に天敵を利用したIPMプログラムが受け入れられてきている。




★(一社)全国農業改良普及支援協会・システム化研究会IPM実証試験(ハウスミカン)成績

愛知県東三河農林水産事務所・農業改良普及課及びJA蒲郡市がまとめた平成26年度の実証では、天敵放飼後側窓開放までに殺ダニ剤の散布を1回或いは実施せずに進められた圃場はIPMプログラムを実施した圃場の約84%(表1)であり、約6割以上の生産者が「成功した」と体感されるようになってきている。

表1. 平成26年度におけるIPMプログラム実証試験圃場での殺ダニ剤利用回数とその割合

平成26年度におけるIPMプログラム実証試験圃場での殺ダニ剤利用回数とその割合
 
さらに、側窓開放によりアザミウマが侵入することでカブリダニに影響のある薬剤を使用しなくてはならなくなるが、多くの生産者が引き続き天敵を維持できるような新たなプログラムの改善を望んでいる。このように当初は年間を通じた栽培の中の一部分で少なくともIPMプログラムを確立するという目標から、今後は年間を通じてのIPMプログラムを検討していくことが重要であると考えている。


●施設カンキツでの天敵利用プログラム
ハウスミカンでの天敵利用プログラムを改善することで、施設中晩柑へのIPMプログラムも対応できると考え、現在「施設不知火」(熊本県)、「施設キンカン」(鹿児島県)などでの実証試験を進めてきている。


☆防除プログラム構築のポイント
施設ミカンも含め「黒点病」「汚れ果症」防除に必要ないくつかの殺菌剤でスワルスキーカブリダニに影響を及ぼす薬剤がある。従って、それらの防除時期(6月~8月)から薬剤の影響のなくなる頃にスワルスキーカブリダニを放飼するプログラムを提供し、実証試験を行っている。
1つに事例として、
①加温時期から6月頃までに天敵利用プログラムを構築

②9月中下旬頃より再びIPMプログラムを構築して秋季のハダニ防除につなげていくというプログラムを組み立てて実証試験を進めている。


まだ結果はまとめられていないが、これからの防除技術として期待されているし、普及を進めて行きたいと考えている。

 
 
 
※2014年10月30日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。