アリスタIPM通信 【海外ニュース】IOBC(国際生物防除学会)に参加して
 
 
【海外ニュース】IOBC(国際生物防除学会)に参加して
 
和田哲夫

今年の9月15日から4日間、IOBC (International Organization of Biological Control 国際生物防除機構)のWPRS グループの「温帯の温室における生物防除部会」総会に参加してきました。
この会は3年ごとに開催されており、北米と北ヨーロッパでの温室栽培での生物防除技術に関する一種の学会です。これまで1998年のサンフランシスコでの総会以来、オーストリア(ウィーン)、フランス、カナダ(ヴィクトリア)、フィンランド、オランダで開催され、北半球の天敵昆虫開発と利用の最先端の話題が議論されます。

今年はベルギーのゲントで開催されましたが、ベルギーもオランダに続いて温室での生物防除は盛んに行われています。果菜類での天敵利用は、ほぼ100%といわれて久しいものがあります。
3年ごとに開催されるのですが、北米と北ヨーロッパではトマト、パプリカ、ナスなどでの生物防除は当たり前になっていることは既報のとおりながら、ここ5-6年はバラ、ガーベラなどの花での生物防除に研究、実践対象が移行してきました。
今回は、花での生物防除がケニア、エチオピアなどにも波及し、現在ではスペインと同じ程度の数量のカブリダニがエチオピアで使用されているということを聞き、やや衝撃を受けました。これらケニア、エチオピアではオランダの栽培会社が現地で栽培をし始めているので、生物防除の実践も比較的容易であったと推察されます。

今回の会議での講演は、スワルスキーカブリダニに比肩しうるような天敵の探索、カブリダニの餌を散布することにより防除効率をあげること、より現場での生物防除の質を上げていくかなどが多く、以前よく聞かれた、「どうして生物防除は広がらないのか?」といったものはわずかにカザフスタンの研究者からあっただけでした。
また以前は研究者がほとんでしたが、今回は天敵製造会社や近年生物農薬に参入してきた化学農薬会社からの参加も多く、生物防除が産業として成り立ってきていることを如実に示しているようでした。
日本も生物利用では世界で10番以内にランクインしているようです。

ヨーロッパでは化学農薬の登録の維持、新規登録が極めて困難になりつつあり、また消費者、とくに女性層から、生物防除に期待する声が多いようで(今回参加者の半数以上が女性)、今後の世界のトレンドは野外の作物での化学剤とのローテーションによる微生物製剤の応用利用が進んでいく可能性があると示唆される学会でした。

 
 
※2014年10月30日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。