アリスタIPM通信 マイトコーネフロアブルを用いたイチゴ・ハダニ類の防除
 
 
マイトコーネフロアブルを用いたイチゴ・ハダニ類の防除
 
日産化学工業株式会社農業化学品事業部
マーケティング部 水野 雅之
 
1. イチゴのハダニ類
イチゴにはナミハダニ、カンザワハダニ等が寄生するが、ナミハダニが主に優占種となる。ナミハダニは体色が黄緑色と見えにくく(右写真)、体長が約 0.6mm と小さいため、被害が出てから発生に気づく場合が多い。バラ科、キク科、ナス科等多くの作物に寄生し、成虫の形態で越冬する。年間の発生回数は 10~15回で 25℃では約 10 日間で卵から成虫となる。
マイトコーネフロアブルを用いたイチゴ・ハダニ類の防除
イチゴに寄生した場合、初期の症状は下葉から現われ、定植後の株では、発生が多いと新葉までむらがって寄生し、葉の養分を吸う。さらに増殖が進むと株全体が萎縮したようになり、ついには完全に枯死するため、防除が不可欠な重要害虫となっている。

2. 殺ダニ剤マイトコーネフロアブル(以下マイトコーネ)について
マイトコーネの有効成分ビフェナゼートは米国ユニロイヤル社(現アリスタ ライフサイエンス社)により創製された殺ダニ活性化合物で、日本では日産化学工業株式会社が開発を行い、2000 年 8 月 17 日に登録を取得した。イチゴにおける登録内容は下表(表 1)の通りである。

マイトコーネフロアブルを用いたイチゴ・ハダニ類の防除
マイトコーネの作用機構の詳細は未だ判明していないが、2015 年現在でも既存剤に対して感受性が低下した系統のハダニ類に対しても比較的高い効果を示す(表 3)ことから、既存剤との交差抵抗性はほとんどない新規の作用機構であることが示唆されている。
マイトコーネフロアブルを用いたイチゴ・ハダニ類の防除

② 天敵類に対する影響
本剤はハダニ類・サビダニ類に対して高い効果を示す一方、訪花昆虫であるミツバリ、マルハナバチに対する影響日数は 0 日であり、また、約 20 種の天敵類に対してほとんど影響がないことが認められている(表 4 ※表 4 からは次ページ以降をご参照ください)。さらに、イチゴ等施設栽培現場における導入天敵との体系防除を想定して、2 種カブリダニ類を用いてより詳細な影響検討を行った。

1) カブリダニに対するステージ別影響
チリカブリダニ、及びミヤコカブリダニについて、卵、幼虫、雌成虫の各ステージに対し直接散布したが、実用濃度(200ppm)及びその 5 倍濃度(1000ppm)においてもほとんど影響がなかった(表 5)


2) カブリダニに対する摂食・産卵への影響
マイトコーネを処理したカブリダニを無処理のナミハダニを産卵させたインゲン葉に接種し、カブリダニの摂食量と産卵量を調査した結果、無処理のカブリダニと差が認められなかった(図 1、2)

以上のことから、マイトコーネは、カブリダニの増殖、及び捕食活動にほとんど影響を及ぼさないことが判明している。



3. マイトコーネを用いたハダニ類の防除
マイトコーネとカブリダニを用いたナミハダニの体系防除試験を行ったところ、慣行防除区以上にナミハダニの寄生密度を長期にわたって抑制していた(表 6、図 3)。
本試験はチリカブリダニ(スパイデックス)を用いた体系防除試験であるが、ハダニ以外にホコリダニや花粉等を摂食する広食性の天敵であり、飢餓や高温に強いという特性を持つミヤコカブリダニ(スパイカル)を併用することで、より効果的にハダニ防除を行うことが可能であることが各県より報告されている。


4. おわりに
イチゴ栽培におけるハダニ防除は薬剤抵抗性との戦いであったといっても過言ではない。生産現場に発生するハダニ類は、これまでに登録されたいずれの殺ダニ剤に対しても多かれ少なかれ薬剤抵抗性を発達させてきている。今回紹介させていただいたマイトコーネFLとチリカブリダニ(スパイデックス)及びスパイカル(ミヤコカブリダニ)の体系防除がイチゴ生産者のハダニ防除の一助となれば幸甚である。

マイトコーネフロアブルを用いたイチゴ・ハダニ類の防除
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マイトコーネフロアブル
 
 
 
※2015年8月3日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。