アリスタIPM通信 マイトコーネフロアブルを組み合わせた天敵利用プログラム
 
 
マイトコーネフロアブルを組み合わせた天敵利用プログラム
 
マーケティング部 里見純
 
1. 殺ダニ剤マイトコーネフロアブル(以下マイトコーネ)について

マイトコーネの有効成分ビフェナゼートは米国ユニロイヤル社(現アリスタ ライフサイエンス社)により創製された殺ダニ活性化合物で、日本では日産化学工業株式会社が開発を行い、2000年8月17日に登録を取得した。

① 生物活性
マイトコーネの活性スペクトルはダニ目のみとなっており、その他のチョウ目、カメムシ目等には活性が認められない。

マイトコーネの作用機構の詳細は未だ判明していないが、2015年現在でも既存剤に対して感受性が低下した系統のハダニ類に対しても比較的高い効果を示すことから、既存剤との交差抵抗性はほとんどない新規の作用機構であることが示唆されている。なお、最新のIRACの作用機構分類では20D(ミトコンドリア電子伝達系複合体Ⅲ阻害剤)に分類されている。


② 天敵類に対する影響
本剤はハダニ類・サビダニ類に対して高い効果を示す一方、訪花昆虫であるミツバチ、マルハナバチに対する影響日数は0日であり、また、約20種の天敵類に対してほとんど影響がないことが認められている(表1)。

マイトコーネフロアブルを組み合わせた天敵利用プログラム
 
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2. マイトコーネを用いたハダニ類のIPM防除

マイトコーネはスワルスキーカブリダニに対してはやや影響があるものの、その他のカブリダニ類を初めとした天敵に対する影響が少なく、ハダニに対する活性が比較的高く維持されている地域も多いことから、IPM防除におけるレスキュー剤として位置づけされ、特に促成栽培イチゴおよび落葉果樹の天敵利用で活用されている。

促成栽培イチゴでは、近年各種殺ダニ剤に対して感受性が低下したハダニが各地で報告されており、比較的感受性低下が認められていないマイトコーネは天敵放飼直前の殺ダニ剤として使用される場面が増えている。次ページに例をあげる(表3)。

マイトコーネフロアブルを組み合わせた天敵利用プログラム
 
オウトウでは、マイトコーネの収穫前日数が14日であるため、ハダニによる収穫後の落葉を防止するために利用されている。「収穫後のお礼散布にマイトコーネ!」という合言葉が広がっているかどうかは定かではないが、マイトコーネは天敵を利用した場合でも天敵類の密度を下げることがないため、今後もこのポジションが維持されていくと考えられる。加温ハウスオウトウのハダニ防除例を表4に示す。

ナシでは、収穫前日数が前日であることから、近年利用面積が拡大しているスパイカルプラス(写真1)との体系利用に適している。特に赤ナシではサビダニ防除(写真2)でハチハチを散布することが多いため、スパイカルプラスを利用する場合、ハチハチの影響日数である散布から40日を経過した時点での放飼を勧めており、5月中旬にハチハチを散布した場合、スパイカルプラスの放飼は6月下旬以降を推奨している。仮にそれ以降ハダニ密度の上昇がみられたとしても、マイトコーネを使用することでスパイカルプラスの密度を下げることなくハダニ密度のみを低く抑えることができる。表5にある地域でのスパイカルプラスを組み込んだ防除暦を示す。

マイトコーネフロアブルを組み合わせた天敵利用プログラム
 
マイトコーネフロアブルを組み合わせた天敵利用プログラム
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野菜類、特にイチゴ以外の果菜類で利用されている天敵はスワルスキーが主体となっており、マイトコーネはスワルスキーに対してやや影響がある(表6)ため、スワルスキー放飼前の殺ダニ剤として放飼7日前までに使用する。スワルスキーが十分定着していることが確認できれば、スワルスキー放飼後でも利用は可能であるが、他の影響の少ない殺ダニ剤で使用回数が残っているものがあれば、そちらを優先させる。

果樹でもカンキツやマンゴーはスワルスキーを利用する場面が多く、これら2作物でも上記のイチゴ以外の果菜類と同様の対応をすることが望ましい。
 
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※2016年8月5日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。