アリスタ通信 『リモニカ』の特長と施設栽培果菜類での上手な使い方
 
 
『リモニカ』の特長と施設栽培果菜類での上手な使い方
 
アリスタ ライフサイエンス(株) 里見純
 
はじめに
リモニカは、リモニカスカブリダニを有効成分とする天敵殺虫剤です。昨年の8月に発売開始となり約1年が経過いたしました。そこで、これまでの試験結果や利用者のご意見をまとめて今年利用される方に少しでもお役に立てればと思います。


リモニカの特徴と利用場面
リモニカは先行して発売されているスワルスキー®(有効成分:スワルスキーカブリダニ)とほぼ同様の食性を示す捕食性カブリダニで、アザミウマ類・コナジラミ類に登録を取得しています(表1)。
チャノホコリダニも捕食することがわかっていますが、まだ適用拡大には至っていません。また、スワルスキーと同様に花粉も餌として増殖することがわかっています。

『リモニカ』の特長と施設栽培果菜類での上手な使い方
 
 
リモニカとスワルスキーとの違い
両種の違いは、捕食可能な虫の大きさと温度にあります。ヒラズハナアザミウマに対する捕食量をリモニカとスワルスキーとで比較した試験結果を示します。

25度の条件ではスワルスキーもヒラズハナアザミウマ1齢幼虫を捕食しました(グラフ1)。しかし、大きい2齢幼虫に対する捕食量には大きな差が生じました(グラフ2)。このことからもリモニカはスワルスキーより大きな虫を捕食することが可能であると言えます。

 『リモニカ』の特長と施設栽培果菜類での上手な使い方
 
 『リモニカ』の特長と施設栽培果菜類での上手な使い方

さて、温度に関してですが、同じくヒラズハナアザミウマを用いた試験で興味深い結果が出ました。
 
 『リモニカ』の特長と施設栽培果菜類での上手な使い方
 
25度の条件下ではスワルスキーも1齢幼虫を捕食することは可能でしたが、温度が下がるとリモニカとの捕食量の差がはっきりします。

以上の結果から、リモニカはスワルスキーよりも低温期の利用に適していることがわかります。

 『リモニカ』の特長と施設栽培果菜類での上手な使い方
 
グラフ4、5は、促成ピーマンでリモニカとスワルスキーの放飼頭数を合わせた場合の増殖の比較です。
定植日は9月18日で、放飼日は10月2日です。放飼量は両種とも50,000頭/10aです。
放飼時の害虫密度はどちらの圃場も低く、カブリダニの餌も似たような条件下での試験となりました。
結果はグラフを見て明らかなように、同じ頭数で放飼した場合、リモニカは1ヶ月ほどで葉当り10頭を超えるほど増殖し、スワルスキーを上回りました。その後、スワルスキー放飼区は1月中旬にアザミウマの数が増加してきましたが、リモニカ放飼区はまだアザミウマが増加する様子は見られませんでした。
グラフ6はリモニカの放飼量を25,000頭/10aとし、スワルスキーの半量とした場合の促成ナスでの結果です。半量にもかかわらず、リモニカは順調に増殖し、スワルスキーを上回りました。
 

リモニカはスワルスキーよりも肉食系?
リモニカはスワルスキーよりも肉食系?
 
写真3 の左と中央はメロンの花のガクの毛を拡大したものです。
スワルスキーはガクの毛に多くの卵を産み付けていることが観察できますが、リモニカはこの部分にはまったく産卵しません。
リモニカの卵はメロンでは葉裏によく見られます。これによりスワルスキーがより花粉に依存して生活していることが示唆されます。また、実証圃試験を実施している中で、リモニカは放飼時に害虫が残っていた方が、定着がいいのではないかという話を聞くことがあります。
まだ確証はありませんが、リモニカはスワルスキーより肉食系である可能性があります。
スワルスキーは花粉があれば定着可能ですが、リモニカは餌の虫が必要かもしれないということです。
サトウダニを増殖して後からまいた方がいいかどうかは不明ですが、このような工夫が必要となるかもしれません。


まとめ
リモニカは、低温条件下でもスワルスキーより捕食量が多いと考えられます。また、アザミウマの2齢幼虫を捕食可能であることが再確認できました。そして、促成栽培の定植後の利用ではリモニカの増殖速度はスワルスキーよりも速い傾向があり、花粉よりも害虫のアザミウマやコナジラミの方を好んで食べる可能性があります。

以上の結果から、リモニカは促成栽培で害虫が多少発生している条件でもスワルスキーより害虫密度を低く抑えてくれそうな印象です。しかしながら、害虫が発生している条件で放飼するというのはリスクが高いと思われますので、これまで通りゼロ放飼をお勧めいたします。また、比較的高温で推移する夏秋栽培や抑制栽培ではスワルスキーの方が適していると考えられます。

4ページ目にヒラズハナアザミウマの室内試験結果を示しましたが、イチゴでリモニカは使えないかという問い合わせを多くいただいています。昨年来、イチゴでのリモニカの試験を各地で実施しており、いくつかの有効事例が出てきています。現在のところ、年内に放飼して越冬するアザミウマ類を減少させ、年明けの被害を最小限に抑えるという方向で利用することを考えています。さすがに3月以降にアザミウマ類がハウス外から飛び込んでくるとリモニカだけでは難しいと思います。特にイチゴではサイドネットやホリバーの設置率が低いため、アザミウマ類を3月以降も減らしたいのであれば、サイドネットとホリバーは必須として取り組むべきだと考えています。

これまでの試験で、アザミウマの種類の違いによる被害の違いがわかってきました。写真4、5で示しますので、どのアザミウマが発生しているのか確認する指標にしてください。

『リモニカ』の特長と施設栽培果菜類での上手な使い方
 
以上、リモニカの特性を理解した上でご利用してくださるよう、お願い申し上げます。


※2016年11月30日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。