アリスタ通信 新しい農業と「バイオスティミュラント」の必要性について(2)
 
 
新しい農業と「バイオスティミュラント」の必要性について(2)
- バイオスティミュラントの定義について -
 
アリスタ ライフサイエンス(株) 須藤 修

今号より、「バイオスティミュラント」(以下BS)とは何かを、詳しく説明していきたいと思います。

BSとは何かを語る上で、まずこれらの農業資材の定義を定めておく必要があります。しかしながら、BSという産業上のカテゴリーはまだ歴史が浅く、明確な定義というものがありません。したがって、人によって指し示している範囲が大きく異なるのが現状です。また、資材の種類で定義付けを行うのか、効果や目的で行うのか、さらには既存の法規制をベースに定義を行うのかでも、まったく異なった見解が生まれてきます。

本文では、この混乱を避けるために、ヨーロッパのバイオスティミュラント協議団体であるEBIC(European Biostimulants Industry Council: ヨーロッパ・バイオスティミュラント産業協議会)が定めている定義を紹介し、当座の定義としたいと考えます。

EBIC のHPは、 http://www.biostimulants.eu/ をクリック
EBIC
これによると、「一般的定義として、農業用BSは作物の生理学的プロセスを調節・強化し、より効率化を図るために、植物または土壌に適用される化合物、物質およびその他の産物を含む多様な配合物を包含する。」と記述されています。
これだけを読んでも非常に抽象的でなかなか掴みどころがありませんね。

さらに次のような記述が続きます。
「BSは、作物の活力、収量、品質および収穫後の貯蔵寿命/保存性を向上させるために、栄養素とは異なる経路で植物生理に作用するものである。」
つまり、栄養素ではないのだけど、作物の生育や生産物にプラスの効果を与えるものと読み解くことができます。

BSの効果は、次のように具体的に定義付けされています。
「BSは、種子の発芽から植物の成熟までの作物ライフサイクル全体にわたる植物の生長と発育を促進するもので、以下の目的で使用される。」

- 植物の代謝効率を改善して収量を増やし、作物の品質を向上させる。
- 非生物的ストレスに対する植物耐性の増強、および非生物的ストレスからの回復。
- 栄養素の同化、転流および利用を促進する。
- 糖度、色、結実などの、生産物の品質特性を向上させる。
- 植物の水バランスを調整し改善する。 
- 土壌の特定の物理化学的性質を強化し、補完的に土壌微生物の発育を促進する。
新しい農業と「バイオスティミュラント」の必要性について(2)

「非生物的ストレス(abiotic stresses)」という、とても難しい言葉が前ページに出てきますが、これは分かりやすく言うと、水不足や高温によるダメージ、日照不足による障害、塩害による生育不良など、環境変動に起因する様々なストレスを指しています。
新しい農業と「バイオスティミュラント」の必要性について(2)

以上に示されたBSの効果や狙いは従来の農薬や肥料だけでは対処が難しいものばかりです。EBICは従来の農業用資材との違いを「BSと従来の農業資材の区別は何か?」と自問しています。これに対する回答を次のように述べています。

「BSは、その製品中の栄養素(肥料成分)の存在にかかわらず、肥料とは異なるメカニズムによって作用する。BSは、植物の活力向上にのみ作用し、害虫または病気に対する直接的な作用をもたない。そのために作物保護製品(農薬)とは一線を画すが、結果的には作物の栄養と作物の保護に対して補完的な作用を及ぼす。」と結んでいます。

以上のようにEBICはBSの定義付けしています。

ここまでを読んでいただき、まずはBSとは何なのか、ご理解いただけましたでしょうか?
BSは地球規模の食糧不足を解決するための新たな解決策として、全世界でその産業形成に力が注がれている分野です。

次回はバイオスティミュラントの種類について説明を進めていきます。

新しい農業と「バイオスティミュラント」の必要性について(2)

※2017年8月9日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。