アリスタ通信 酷暑期におけるマルハナバチ利用の留意点
 
 
酷暑期におけるマルハナバチ利用の留意点
 
アリスタ ライフサイエンス(株)
プロダクトマネージャー 光畑 雅宏

トマトの夏秋栽培、あるいは促成栽培の初期は非常に施設内が高温になります。日中はもちろんですが、夜間の温度にも注意が必要です。

一般的にトマトの場合、35℃以上の高温に短時間でも遭遇した花粉は、その後の発芽や花粉管の伸長に影響を受けるということが知られています。さらに、花粉の発芽や花粉管の伸長は、高温にさらされた時間の長さによっても大きく影響を受けることも報告されています。そのため、日中の高温は避けられなくても、夜間の温度(夜温)をなるべく下げて管理することが、花粉の発芽や花粉管伸長にとっては重要になります。

例えば、私たち人間が寝苦しいと感じる「熱帯夜」とよばれる25℃以上の夜温が続くと、花が受精能力を失うため、マルハナバチがトマトの花に訪花せず受粉しないことがあります。夜温25℃もしくは1日の平均気温が28℃以下になることが、花粉の発芽率を維持する一つの目安になります。そのため、高温障害によって著しく花粉の発芽率が低下している場合には、マルハナバチによる受粉を一旦あきらめる、もしくはマルハナバチの導入を我慢していただき、トマトトーンなどの植物調整剤(ホルモン)処理を行うことを検討してください。また、トマトの花の状態は開花している時の条件だけでなく、その花(花芽)が形成されるとき、つまり開花の2週間前の温度や気候条件にも留意をしていただくことが必要です。

花芽形成期に高温などの障害を受けた花には、白花(写真①-a)や長花柱花(写真①-b)などの明らかな奇形花がみられます。このような花は受精能力がないため、マルハナバチは訪花しません。
酷暑期におけるマルハナバチ利用の留意点
酷暑期にマルハナバチを導入する場合には、花粉の発芽状況の確認は難しいとは思いますが、ご自身でも確認しやすい花の色、形、花粉が十分に出ているかなど花の状態を確認してください。

花粉が出ているか否かの確認は、写真②のように黒っぽい板を花の下に添えて、指などで花を軽くたたくと花粉の落下を簡単に確認することができます。花粉の多い、少ないはやはり、花芽形成期の条件で決まってきます。花が十分に花粉を出していることもマルハナバチの活動、トマトの受精(着果)の重要なポイントになりますので、確認されることを習慣にしていただくと良いでしょう。
酷暑期におけるマルハナバチ利用の留意点

花の状態については夜の温度を留意していただくことを中心に書かせていただきました。一方で、日中は巣箱を熱から守っていただくことに注意が必要です。


地下埋設とタイベックシートを利用した巣箱の遮熱
自然界のマルハナバチの巣は土の中の空洞に創られています。地中の空洞は温・湿度が非常に安定した空間です。例えば、気温が40℃になっていても地中の温度は29℃程度に抑えられています。

マルハナバチは低温に対する耐性が高いハチですが、高温に対しては弱い面があります。特に巣の中にいる幼虫は高温によるダメージを受けやすいため、酷暑期に利用にはマルハナバチの巣箱を十分に高温から守ってあげることが重要です。
本州の夏秋産地では、巣箱を地中に埋めたベランダコンテナなどに設置する地下埋設方法(写真③)を実施している産地があります。また、大きな発泡スチロールの中に巣箱を置き、高温になる日中の数時間だけでも保冷剤や水を凍らせたペットボトルをその中に入れておくなどの工夫をされている方もいらっしゃいます。

なお、なかなかそこまで手をかけることは難しいという方には、当社では暑さ対策の一助として、丸和バイオケミカル株式会社のご協力を得て、遮光、遮熱効果の高いタイベックシートをマルハナバチの巣箱を設置している台などにかぶせやすい大きさ1m×0.75mに裁断したものを、当社のマルハナバチ製品「ナチュポール」、「ナチュポール・ブラック」、「ミニポール・ブラック」をご利用の生産者の方に無償で配布しております(写真④)。

マルハナバチの巣は、遮光などの暑さ対策が何もなされていない状況(35℃以上)に巣箱が数時間さらされると、巣の材料であるロウが溶けて、幼虫が死滅するなど深刻なダメージを受けます(写真⑤)。幼虫のいない巣箱は、働きバチが生存していても花粉を食べてくれる幼虫がいなければ、トマト花への訪花活動はしません。ぜひ、タイベックシートをご活用いただき、巣箱を暑さから守りつつ、状態の良いトマト花が咲く環境でマルハナバチをご利用ください。

ナチュポール製品は今作も引き続き、高品質なマルハナバチを安定供給させていただきます。

酷暑期におけるマルハナバチ利用の留意点
酷暑期におけるマルハナバチ利用の留意点
 
※2020年7月31日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。