アリスタ通信 <天敵・マルハナバチ随想>
 
 
<天敵・マルハナバチ随想>
 

なぜクロマルハナバチなのでしょう?

数多くの日本産マルハナバチの種のなかから、なぜ、現在オランダのコパート社で増殖されているクロマルハナバチが選ばれたのでしょうか?

1990年代初めまでは、ハウスのトマトの受粉はほぼ100%トマトトーンというホルモン剤を花に散布することで行われていました。コパート社から、日本ではトマトとイチゴの受粉はどうやっているか という問い合わせがその頃あり、ハウス栽培でのそれらの作物に受粉が必要であることにさえ、無知だったのですが、トマトには、2,4-D というホルモン剤、イチゴには、ミツバチが使われていることを静岡の池田元専技や千葉の試験場の先生方より教えていただいたのです。

セイヨウオオマルハナバチが90年ごろより、ヨーロッパで、突然使われるようになったのは、ドイツ人の昆虫学者の偶然の発見によりもたらされたのですが、日本には、なんの疑いもなく、ヨーロッパの種である、セイヨウオオマルハナバチが輸入されてしまったのです。

輸入開始から数年たつと、日本の生態学者たちより、外来種を使用するのは、日本のマルハナバチなどの絶滅につながるのでは、というコメントが出てきました。実際ヨーロッパやアメリカに行くと、スペインのカナリア諸島のトマトハウスでは、カナリアでの土着種 カナリエンシス種が、アメリカの西部と東部では、それぞれの地域での種が、増殖、使用されていたのです!

日本、アジアだけが生態学が存在しないかのように西洋種を輸入することに、オランダ、ベルギーの生物学者はどう考えたのか、いまとなっては確認するのはたやすくはないのですが、日本でも、急遽、三重大学の故松浦教授や、玉川大学などからの情報をもとに、栃木県、長野県や、山梨県、岐阜県などで、日本産マルハナバチの女王の採集を始めたのです。

ブルーベリー畑でのコパートのマルハナ研究者Adriaan van Doorn 博士と筆者
ブルーベリー畑でのコパートのマルハナ研究者Adriaan van Doorn 博士と筆者

その結果、生息数も多い、クロマルハナバチとトラマルハナバチがよさそうだ というコパートからのアドヴァイスもあり、長野県野尻湖周辺のブルーベリー畑で玉川大学の学生さんや長野県の果樹試験場の北村先生、オランダ人昆虫学者などの協力を得て、採集できた多くのクロマルハナバチの女王をオランダに空輸することによって、日本産マルハナバチの増殖が初めて始まりました。

都会でもよく見ることのできる、コマルハナバチは巣が小さいということで、最初から選択されませんでした。トラマルハナバチは、見た目が虎の毛皮のようで、採用したかったのですが、増殖方法がやや困難ということで、クロマルに決まったのです。

この時、農水省からも援助の手が差し伸べられ、玉川大学と、筑波のバイオシステムにマルハナバチ用の20フィートコンテナを購入する資金として使うことになったのが、現在のアリスタのバイオシステムの始まりの一因でもあります。  (和田哲記)
 
※2020年7月31日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。