アリスタ通信 「トクチオン」 45周年を迎えるにあたって
 
 
「トクチオン」 45周年を迎えるにあたって
 
アリスタ ライフサイエンス(株)
プロダクトマネージャー 頼富 寿秀


はじめに
皆様、「トクチオン」 という農薬をご存じでしょうか。オルトランはお聞きになったことがある方は多いと思いますが、トクチオンはまだご存じで無い方が多いのではないでしょうか。
事実、某新聞社の認知度アンケートにおいて、トクチオンは最下位でした。出来の悪い子ほどかわいいとよく言われますが、このトクチオン、実はよくできる子なんです。今日はそんな知られざる農薬、トクチオンのお話をさせていただきたいと思います。
「トクチオン」 45周年を迎えるにあたって


1. トクチオンの開発経緯

トクチオンはプロチオホスを有効成分とする有機リン系殺虫剤であり、日本特殊農薬製造株式会社 (現バイエル クロップサイエンス株式会社) 農薬研究所で1968年に開発されました。実用化試験が1970年より開始され、その結果、1975年9月20日に45.0% 乳剤と2.0% 粉剤が新規登録され、その後、32.0% 水和剤及び3.0% 粉粒剤が登録されました。
2020年現在、4製剤の登録を有しており、初登録より45年を迎えることができました。なお、プロチオホス原体の所有権は、2005年11月にアリスタ ライフサイエンス株式会社がバイエル クロップサイエンス株式会社より世界的に継承しております。


2. トクチオンの特長
弊社では同じ有機リン系殺虫剤としてアセフェート (製品名: オルトラン) を有していますが、アセフェートをはじめとする従来の有機リン系殺虫剤は対称型のO-メチル基をもつものがほとんどである一方、トクチオンの有効成分 プロチオホスは非対照型のO-メチル基とS-プロピル基を持つ構造をしております (図1)。
そのため、トクチオンはより抵抗性が発達しにくく、また従来の有機リン系殺虫剤とは異なる害虫に対しても効果を発揮します。また各種の農作物に対して薬害性もなく、さらにミツバチなどの有用昆虫、各種天敵類に対し比較的影響の少ない殺虫剤であることも特長です。ただし、浸透移行性がありませんので、散布の際は葉裏までまんべんなくかかるようにお願いいたします。

図1.プロチオホスと他の有機リン系殺虫剤との構造の違い
図1.プロチオホスと他の有機リン系殺虫剤との構造の違い



3.トクチオンの害虫に対する効果
幅広い害虫に高い効果を示しますが、特にアザミウマ類 および カイガラムシ類には卓効を示します。タマネギ/ネギアザミウマ、カキ/フジコナカイガラムシに対してはそれぞれ特効薬として認識されています。また、カンショ/コガネムシ類幼虫、サトウキビ/ハリガネムシ類やニラ/ネダニ類などの土壌害虫にも効果が高いことに加え、各種作物のハダニ類にも効果があることが特長です。

最近では、2020年3月31日付で、ネギ/アザミウマ類およびネダニ類に対する登録を取得しております。アザミウマ類はタマネギ同様、度々問題となる害虫ですので、効果の高いトクチオン乳剤をローテーション散布の1剤としてお試しいただけますと幸いです(図2)。

図2. トクチオン乳剤のネギ/アザミウマ類に対する効果

図2. トクチオン乳剤のネギ/アザミウマ類に対する効果



4.IPMプログラム内での使用について

トクチオン乳剤の天敵(チリカブリダニおよびミヤコカブリダニ)への影響日数は約1ヶ月ですので、当社のIPMプログラム内では、イチゴ苗を本圃へ移植する前のハダニ類の防除剤として、育苗期にご使用いただけます。なお、イチゴでの使用時期は収穫75日前までとなっておりますので、最終散布は収穫時期から逆算していただけますようお願いいたします。
また、ナシとイチゴ以外の作物におきましても、トクチオン剤を組み込んだIPMプログラムを作成中ですので、順次提供させていただきます。
「トクチオン」 45周年を迎えるにあたって



5.今後の開発について

トクチオンは販売開始から45周年を迎える古い殺虫剤ではありますが、新規に開発されている殺虫剤と比較しても未だ劣ることない効果を示しております。そしてその特長を活かして新たな開発を今後も続けてまいります。その一つとして、現在、各種作物のセンチュウ類に対しての試験を進めておりますので、登録取得が近くなりましたらお知らせいたします。

今後とも トクチオン をご愛顧いただけますようお願い申し上げます。
 
※2020年11月9日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。