アリスタ通信 促成栽培でのリモニカ・スワルスキー混用放飼のすすめ!! ~熊本での実証調査事例から~
 
 
促成栽培でのリモニカ・スワルスキー混用放飼のすすめ!!
~熊本での実証調査事例から~
 
アリスタ ライフサイエンス(株)
前フィールドアドバイザー 荒木 均

混用放飼とは、リモニカ(12,500頭 1本)+スワルスキー(50,000頭 1本)/10aをボトル1本に混合して放飼するもので、均一な放飼と作業の効率化が図られます。

①促成作で天敵放飼が遅れる際の早期定着
②厳寒期の安定的増殖
③アザミウマ類の捕食効果
などから、是非「リモ・スワ混用放飼」を検討してみませんか。

Ⅰ 熊本での施設園芸・促成栽培作の現状 ~地球温暖化で作型が2極化傾向~
昨年、熊本では集中豪雨により日本3大急流の一つ球磨川で歴史的な被害が起きたことは記憶に新しく台風被害含め年中気象災害が起きる現状にあり、日本一の施設園芸県といわれる熊本では、基本的な回避対策が急がれている。最近では、台風等の対策として「耐候性ハウス」への更新、温暖化により冬期でも害虫が多発し「定植を早める・遅らせる」といった、2極化で回避する取り組みが見られる。
何と言っても、熊本での促成栽培では、年内のアザミウマ類、コナジラミ類などの防除と3月以降増えてくる同害虫の防除が命題である。

Ⅱ 遅い時期の定植に対応した天敵利用 ~11月以降の天敵利用をどうするか~
従来、ナス、ピーマン、キュウリなどの促成栽培でスワルスキーを利用する際は、10月中旬頃までの放飼を進めてきた。一般的に耐候性ハウスでの栽培は、定植が8月下旬~9月上旬頃までになり天敵の放飼も9月末頃までに終え、防除効果を十分発揮する。
放飼日が遅くなると、スワルスキーだけでは、定着・増殖するまで時間がかかり、年内だとアザミウマ類の増え方が勝り防除が難しくなる。
典型的な事例として、県南地域のパプリカ作での実証調査結果を紹介する。

◎事例1 熊本県南地域でのパプリカ作天敵利用実証調査結果概要
 
ハウス概要 連棟加温ハウス サイドネット0.6ミリ、最低温度18℃前後
1. スワルスキー単独放飼区 
面積18a 定植9月上旬 スワルスキー5本/18a放飼 9月29日放飼
2. リモニカ・スワルスキー混用放飼区 
面積16a 定植 10月2日 リモニカ2本・スワルスキー2本  10月27日放飼
   
生産者は、天敵利用経験5年目で、毎年天敵放飼後の対象害虫は殆どなし。
このほか、スパイデックス、アフィパールを利用。
 
農薬の散布は毎月1回程度で、殺虫剤はアブラムシ、ハダニ、ヨトウムシ系やコナカイガラムシなどが主体。
 
スワル放飼
スワルスキー区は、9月29日放飼で最適な環境にあり、増え方が早く、1か月後には8頭以上まで増加。その後、1月~2月の厳寒期に入ると気温低下と共にスワルスキーは0.5頭/葉程度まで減少したが秋冬期の害虫を殆ど防除。

2. リモ・スワ区 ~10/27放飼でも厳寒期2頭/葉と安定的に定着~
リモ・スワ区 ~10/27放飼でも厳寒期2頭/葉と安定的に定着~
リモ・スワ区は、10月27日と約1か月遅れで放飼。11月以降ハウス内気温も低下する中でカブリダニの増加は、そう期待できないが、このハウスでは放飼後約1か月以上で2頭/葉程度まで増え、リモニカの低温性などもあり、厳寒期でもほぼこの水準で推移して葉裏等でのアザミウマ類、コナジラミ類の発生は殆どなし。
ただ、春先からのヒラズハナアザミウマの発生はパプリカ・ピーマンやイチゴに被害を与える。2021年の春、熊本県では病害虫防除所から発生注意報が発表されるなど、4月以降の多発生が問題となった。この圃場でも、パプリカの花の中で4月上旬までは観察されなかったが、5月になり急激に増えたとのこと。生産者からは、「ヒラズハナアザミウマが1花に10頭(成虫)程度見えるものもあった」が、リモ・スワ区では、このアザミウマが少なく、リモニカの捕食効果が見られた」是非来作から 「リモニカとスワルスキーの混用放飼」にしたいとのことであった。
パプリカでのリモ・スワとスワル区の密度推移を比較すると、スワルスキーは9月~10月放飼だと確実に期待以上の増加を見せてくれるが、厳寒期に入ると減少する傾向にある。
リモ・スワ区では、10月27日と放飼が遅れ、増殖経過は緩慢であるが、厳寒期まで2頭/葉定着しており、リモニカが低温に強く、また、アザミウマ類の2令幼虫の捕食効果もメリットが大きい。

3. リモ・スワ区とスワル区の密度推移 ~1月下旬からリモ・スワ区が逆転~
リモ・スワ区とスワル区の密度推移 ~1月下旬からリモ・スワ区が逆転~
リモ・スワ区が37,500頭とスワル区の50,000頭に対し75%の量。しかも1ヶ月遅れの放飼であったが、リモ・スワ区が寒さに強いという結果であった。


◎事例2 熊本県城北地域 促成ナスの事例から
ナス作では、秋冬期のアザミウマ類の被害が基本的に課題であり、この時期の天敵利用として、ナスの促成栽培で、リモニカとスワルスキーの混用放飼とスワルスキー単独放飼の実証展示圃を設置 (両区ともタバコカスミカメ併用) したので紹介する。ちなみに、秋冬期から春先までタバコカスミカメが増えなかったので、リモニカとスワルスキーの効果を見る結果となった。
 
1
ハウス概要 連棟加温ハウス 定植:9月22日 ハウス内最低気温  12℃程度 
   
2
天敵類の放飼 11月17日に放飼
① リモニカ・スワルスキー区 20a ボトル各1本 (37,500頭/10a)
② スワル区 5a ボトル1本(50,000頭/10a) 
*両区とも10月中旬にタバコカスミカメを放飼したが、春先までナスの葉裏で殆ど確認できず、リモニカ、スワルスキーに依存する結果となった。
   
3
薬の散布は、殺虫、殺菌剤含め月1回程度、12月にアザミウマ類が増えたためファインセーブでレスキュー防除。
   
4
ワルスキー利用3年目。スイカ作との競合で、農薬散布時間を極力減らすことが目標。
 

①リモ・スワ区の推移~安定的に増加~
リモ・スワは12月から増え始め、1月中旬には2頭/葉まで増加。害虫は、12月初旬に2頭/葉近くいたアザミウマ類が12月末には減少しそれ以降ほとんど増えることがなかった。また、コナジラミ類も同様の傾向で推移していた。
リモ・スワ区の推移~安定的に増加~

② スワル区の推移 
スワル区は、ハウス内気温が低いこともあり、増加は緩慢で12月下旬に約1頭程度まで増えたものの、調査終了日までこの水準であった。
アザミウマ類は、12月5日のレスキュー防除後殆ど抑えていたが、3月になり微増傾向が見られ、またコナジラミ類も増加してきたが期間中レスキュー防除で抑制できた。
スワル区の推移 

③ リモ・スワ区とスワル区での増加の推移
促成ナスでの、混用放飼と単独放飼での増え方を見てみると、11月17日と放飼日が遅くなった中、リモ・スワ区は放飼量が37,500頭と少なくても多く見られた。特に1月から2月の厳寒期には1頭以上の差が見られ混用放飼の有利性が確認できた。
リモ・スワ区とスワル区での増加の推移

二事例について紹介したが、その他にも、キュウリ作で11月13日にリモ・スワを放飼した結果、3月の最終調査まで天敵は2頭/葉以上に増加し 「放飼後、殺虫剤の散布なし」 という結果も得られるなど、複数実証調査を行った結果、いずれもスワル単独区との比較優位性が認められた。

これまで、促成栽培でスワルスキーの実証を多く経験したが、厳寒期にスワルスキーの密度が1頭/葉以上で推移することはあまりなく、春先になって、気温上昇と害虫が小発生することでスワルスキーも増えてきた。
今回のリモ・スワ実証展示で、厳寒期2頭/葉以上観察でき、この1頭/葉の差は、今後の増え方など実に大きいと考えている。
①促成作で天敵放飼が遅れる際の早期定着。②厳寒期の安定的増殖。③アザミウマ類の捕食効果などでメリットがあり、是非、リモ・スワ混用放飼を検討してみては!!

※2021年8月2日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。