アリスタ通信 バイオスティミュラント資材 「トリコデソイル」 による甜菜の苗品質の均一性について
 
 
バイオスティミュラント資材「トリコデソイル」による甜菜の苗品質の均一性について
 
アリスタ ライフサイエンス(株) 札幌営業所 千葉啓輔

日本で年間消費する砂糖約190万トンの内、4割は国内生産原料を元に生産されております。その内3割は北海道の 「甜菜」 です。見た目は大きなカブですが、分類上はほうれん草と同じヒユ科に属す作物を原料に作られています 。
砂糖の原料となるのは甜菜の根の部分ですが、その搾りかすはビートパルプと呼ばれ雪に閉ざされる北国の冬の貴重な牛のエサとして、また葉の部分は畑にすき込んで緑肥として再利用されるなど北海道開拓から現代まで北の大地の恵みであり、リサイクル社会を先取りした環境にやさしい作物です。

そんな甜菜の栽培方法は大きく2種類あります。ビニールハウスの中で苗を育ててから畑に植え付ける「移植栽培」と、畑に直接種をまく「直播栽培」です。
前者の移植栽培は雪の残る3月中旬に種をまき、4月中旬には寒波にあてる等、寒さという環境ストレス下で育苗されます。その結果、ストレスにさらされる育苗床の外周は苗の伸長が悪く、水の吸いが弱くなることから、甜菜の場合は良い苗であることはもちろん、均一な良い苗を作ることが求められます。

「トリコデソイル」の主成分である「トリコデルマ菌」は糸状菌と呼ばれるカビの一種で、根の周辺に施用する事で根の表面を覆うように増殖しながら、土壌中の有機物を植物が吸収しやすい無機物に分解し、作物の生長を促進する特長を持ちます。
そこで、甜菜の育苗初期段階でトリコデソイルを苗に灌注処理する事で、根の活動が低下するような寒さでも平均的な苗づくりが出来るのではと仮定し、生産者圃場にて試験を実施いたしました。
その際に、数値的指標としたのは「根の長さ」と「葉数」の2点です。試験の後半において根の活性に伴う肥料効率の指標として「SPAD葉色」も計測。
当初は上記の指標について計測し、平均値による優劣を評価しました。しかし元々根量が少ない事もあり平均値のみでは生産者の方からも「誤差の範囲ではないか」「これ位の差では費用をかける意味があるのか」というご意見もある中で、有効な説得材料なったのが「標準偏差」で平均からのばらつきを数値化・グラフ化する事でした。

網走管内で行った2022年度の試験結果を例に説明致します。
本試験における散布時期については、発芽揃い時にペーパーポット1枚に対し2gの施用としています。また、試験調査は定植3日前と固定して調査を行いました。
写真からも右側のトリコデソイル区の発根が顕著で、また長さが揃っているのがわかります。調査時の主観としては、特に地際に近い箇所での細根の量に違いがあったように見受けられました。
また、試験圃場で水管理をされている方に試験区を伏せて目視で確認をして頂いた際、トリコデソイル区の方が良い苗であるとの評価を頂きました。

次に試験結果の数値から平均値、標準偏差を算出し、グラフ化しました。
先に記述しておりました「誤差の範囲ではないか」との指摘の理由にもなりますが、根長の平均値ではトリコデソイル区が13.2㎝、無処理区が11.2㎝とわずかな差になります。ところが標準偏差で示すことで、トリコデソイル区の根長のばらつきは非常に少ない事を表すことが出来ます(グラフ・オレンジ棒) 。

同時に平均値当たりの標準偏差(変動係数)も算出すると、その差が歴然としている事もわかります。
トリコデソイル区の方が均一な根長となっている事をわかって頂けると思います。

この方法を用い、3件の調査を行ったところ全てにおいて、同等な結果が見られました。
これは同様に根の少ない 「たまねぎ」の調査においても使用する事が出来、また同様な結果となっております。この手法は他の作物での効果、ひいては数値化する事が難しいバイオスティミュラントの効果を示す際にも転用できるものと考えております。
今回の試験結果から、バイオスティミュラントの「植物本来のポテンシャルを十分に引き出す」という定義を十二分に証明でき、また甜菜の課題であった春先の低温という気象条件下での平均的な苗づくりが出来るという事を実証できたと考えます。

作物しいては植物も生物です。生物として捉えるとき動物・植物の違いはありますが、それぞれの生長ステージにおける生理活性は似通ったものがあります。多種多様に増えてきているバイオスティミュラント資材が作物の生長ステージにおいて、どう効果を示すかを理学的に実証し皆様に伝えていく事が我々メーカーの責務と考えております。



※2022年9月14日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。