アリスタIPM通信 促成栽培ナスでのスワルスキーの使い方
 
 
促成栽培ナスでのスワルスキーの使い方
 

ナスの促成栽培におけるスワルスキーを利用したIPMプログラムでは、スワルスキーカブリダニの秋放飼を行ないます。これまでスワルスキー利用に取り組まれたほとんどの方が成功体験を経験しており、各地で好評を得ています。

要点は、
1. 定植後なるべく早く放飼する。
2. スワルスキーに影響のある薬剤を散布しない。
3. 粘着トラップのホリバー・ブルー、イエローを設置する。
4. 1mm未満の目のサイドネット(スリムホワイト30でも可)を使用する。
という以上4点です。

以下に簡易チャートを作成しましたので参考にして下さい。

促成栽培ナスでのスワルスキーの使い方
 
 
<解析>スワルスキーのキュウリのアザミウマ類・コナジラミ類に対する
実証圃試験まとめ
 
スワルスキーは発売から2年半が経過し、ピーマン、パプリカ、シシトウ、ナスへの普及が着実に進んでいます。さらに、スワルスキーはキュウリでの定着性が非常によく、葉当り10頭以上に増殖することが分かってきており、私たちはキュウリ栽培におけるIPMプログラムにぜひ使って頂きたい天敵であると考えています。
ここでは、2009年~2011年上期までの実証圃試験を紹介し、今後の対策を提案します。

以下のような観点から解析を行ないました。
1. つるおろし栽培と摘心栽培とで効果に差があるのか?
2. 資材との併用の有無によって効果に差があるのか?
3. ゼロ放飼ができていたかどうかによって効果に差があるのか?
4. 春の早めの放飼と秋の遅めの放飼は効果に差があるのか?
 

評価はスワルスキーの定着具合と放飼後3ヶ月以内の害虫密度の抑制程度を中心に行いました。
◎ :スワルスキーが順調に増殖し、害虫密度を低く抑えた。
○ :スワルスキーは順調に増殖したが、一時的に害虫密度が高まり、その後、レスキュー防除やスワルスキーの増殖により抑えることができた。
△ :スワルスキーは順調に増殖したが、圃場の一部で害虫密度が高まり抑えきれない所があった。
× :スワルスキーの増殖が間に合わず、害虫の密度が全体的に高まってしまった。
誤 :スワルスキーの放飼前後に影響のある薬剤を散布してしまった。
 
促成栽培ナスでのスワルスキーの使い方
一般的に摘心栽培の場合、葉かきの回数がつるおろしよりも多く、スワルスキーを放飼しても持ち出ししてしまうため、効果が劣るのではないかと言う方もいらっしゃいます。
しかし、実証圃試験の結果を並べてみると、摘心栽培でも「◎」の評価が多く得られていることがよくわかります。したがって、つるおろし栽培でも摘心栽培でもスワルスキーの効果に大きな差はないと考えられます。
スワルスキーを放飼した直後に葉かきをして葉を外に持ち出すと、せっかく産んだ卵や産まれたばかりの幼虫を圃場外に持ち出してしまうことになりますが、今回の解析では葉を持ち出す、持ち出さないにかかわらず良好な結果が得られています。葉上にスワルスキーを放飼した跡が残っている葉はなるべく残すように注意すれば、摘心栽培でもスワルスキーはしっかり定着し、十分な効果が得られると考えられます。
 
 
促成栽培ナスでのスワルスキーの使い方
サイドネットとの併用でスワルスキーの効果は左右されるかどうかをまとめました。特にアザミウマを対象とした春放飼の場合、サイドネットを張っていない試験は「◎」の数が減り、「○」の数が増加、「×」の試験例もみられることから、スワルスキーの春の放飼では効果を確実にするためにもサイドネットとの併用をお勧めいたします。なお、UVカットフィルムを展帳した試験例も解析しましたが、ほぼ同様の内容となりました。
スワルスキーと資材との併用を行なわない場合、アザミウマの成虫の飛び込み量が多いとスワルスキーが定着していてもアザミウマの被害を抑えられないと考えられます。特に春先に野外からのアザミウマの飛び込み量が増える時期にはサイドネットやUVカットフィルムなどの資材との併用をお勧めいたします。
 
促成栽培ナスでのスワルスキーの使い方
ゼロ放飼ができていたかどうかによってスワルスキーの効果に差があるのかどうかを検討しました。
スワルスキー放飼時に害虫の発生がない場合、効果の振れが少ないことがわかります。一方、放飼時に害虫の発生がある場合、4試験中2試験が「×」であり、放飼時の害虫密度は低く抑えておく必要があると再認識できました。
 
 
促成栽培ナスでのスワルスキーの使い方

スワルスキーの放飼時の気温と効果の関係を解析するために、春の早めの放飼と秋の遅めの放飼が効果に影響を及ぼすのかどうかを検討しました。北日本(東海以東)と南日本で分けましたが、北日本は実施例が少なく、ほとんどが良好な結果でしたので、気温の関係は判然としませんでした。春の早めの放飼は南日本で結果のランクがやや下がる傾向にありました。また、実証圃試験では10月中のなるべく早い放飼が徹底されたため11月以降の放飼事例が少なくなりました。この結果から、秋の放飼では10月中なるべく早めにスワルスキーを放飼すれば、年内の防除は十分可能であると考えられます。


以上のことから、スワルスキーをキュウリで使用する場合、次の4ポイントを抑えておけばほとんどの利用者が良好な結果を得ることができます。
1. 影響のある薬剤を散布しないこと。
2. サイドネットもしくはUVカットフィルムを併用してアザミウマの外部からの侵入をなるべく防ぐこと。
3. 促成栽培の春放飼においては、ゼロ放飼の徹底をすること。
4. 秋放飼は、10月の早いうちに済ませてしまうこと。

スワルスキーのキュウリへの普及は黄化えそ病・退緑黄化病の北上に伴い徐々に広がりつつあります。上記の注意点を踏まえて上手な使い方をしていただけますようお願いいたします。

 
 
※2011年7月30日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。