アリスタIPM通信 生産者の声(バラ、スパイカルEX・スパイデックス)
 
 
生産者の声
 
熊本県 阿蘇温室組合
バラ生産者 村上 健次さん
 

天敵がバラ栽培の危機を救った
世界一のカルデラ火山「熊本県・阿蘇山」カルデラ内のほぼ中心に阿蘇市内牧温泉があります。約30年前、この温泉熱を利用した、花卉(バラ)団地が建設され、4戸の農家の皆さんがバラ専業経営を開始しました。

村上さんも、この一員として、現在、温室30aで12品種の栽培に取り組み、昨年は、県花卉農協主催の花卉品評会で最優秀賞を受賞されるなど先進的経営を実現されています。

ハダニとの戦い
~~バラ生産をやめようと思った~~
 
ハダニの防除は主に合成ピレスロイド系殺ダニ剤を使用していましたが、4〜5年前からその効果が見えなくなり始めました。

ハダニが抑えられないのは周年栽培のバラでは大問題です。
 
 
村上  健次さん

農薬を大量に何回も防除してもハダニに対する防除効果がなく、一時はノイローゼになりかけました。日々、栽培管理には目がいかず「何とかハダニを防除しないと・・」と、温室内を加湿状態にしてハダニの抑制を試みましたが、逆にバラの草勢が悪くなり切り花の収量・品質は落ちる始末でした。ほとほと困っていた時に出会ったのが、天敵のミヤコカブリダニとチリカブリダニでした。

始めは、「本当に効果があるの?」と疑心暗鬼の中にも「これ以外に方法はない!」と、放飼前の農薬影響をチェックし、ミヤコカブリダニとチリカブリダニを同時放飼しました。その後も、ハダニの生息場所を見つけては局所防除とカブリダニの追加放飼を行い、約1年かけて、見事完全防除を達成しました。現在、殺虫剤、殺ダニ剤はほとんど使用せず、殺菌剤によるウドンコ病などの予防的防除を中心に行うだけになりました。

また、アザミウマ類やコナジラミ類も重要病害虫の一つですが、現在、阿蘇普及振興課の調査研究の一つとして「スワルスキーカブリダニ」による防除効果を実証試験中であり、この効果も確認されてきています。



良いことずくめの天敵利用
~~省力化、低コスト化、品質向上~~

ハダニ防除に苦労していた当時、防除に時間をとられ適期作業が怠り、農薬代もかさみ、品質の良いバラが収穫できないなど、まさに悪循環だったのですが、天敵利用により、すべてが良いほうに良いほうに好転し始めました。


(1)農薬防除費が約1/4以下に
毎年、農薬防除費に120万円以上かかっていましたが、現在では約30万円程度と大幅なコスト低減ができ、その主体は殺菌剤による病害の予防防除が殆どとなりました。天敵は1年1回の追加放飼を計画して進めています。

(2)農作業時間の大幅な軽減と計画的なバラの生産管理作業を可能に
これまで、夫婦と長男3人の労力で30aの面積をこなすのがやっとでしたが、カブリダニの利用により防除時間が大幅に削減できたことで、長男は現在オランダで花卉研修中、我々夫婦2人で十分管理できるようになりました。 このことはとても大きな意味を持っています。すなわち、栽培管理全体、労働面で余裕ができ、日々の水や肥培管理、バラの観察に目が行き届くようになりました。これによって品質の良いバラの出荷ができるようになり、今一度土耕栽培での土づくりをめざす余裕も生まれるなど「寝ていても常に天敵が防除している」という安心感もでき、天敵利用を絶賛しています。

オランダ花卉農家で研修中の長男から「オランダでも天敵でのアザミウマ類の防除が課題になっている」との電話がありました。長男の帰国後には、私たち村上バラ園ではさらなるIPM防除技術の進化をさせていきたいと考えています。
 
 
※2011年10月31日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。