茄子(なす)のアザミウマ類
 
【アザミウマとは】
名前の由来は、キク科の花の「薊(アザミ)」から出てくる虫の数を数えるときに「馬出よ~♪  牛出よ~♪」と歌いながら、花の中から出てくる虫の数を競ったという遊びからきていると言われています。
ミカンキイロアザミウマ
また違う説では、古来「昆虫」のことを「ウマ」や「ウシ」と呼び、アザミウマは「何となく馬面に見える!?」ことから、「薊(アザミ)」から出てくる「ウマ」で「アザミウマ」になったとも言われています。(昔の方の想像力・着想は、とても豊かだったんですね。)
アザミウマは、体長が10mm(1cm)位の大型なものもいますが、農産物に加害するものは、体長が1mm~2mm程度の小さな昆虫で,主に「花の中」や「土の中」などで生活し、主に花粉を餌とする昆虫です。
生態については「卵」→「幼虫」→「蛹」→「成虫」のサイクルで、「卵」は葉や幼果などの組織内に1個ずつ産みつけられます。(卵は1つの雌で300個~500個位)
ふ化した「幼虫」は主に花に寄生して花粉を餌に成長します。「蛹」になる前の準備時期が近づくと「幼虫(2齢)」は地表に移動して土中などで「蛹」となります。
「蛹」の時期は食害はしませんし、移動もほとんどしません。「成虫」になると再び花に寄生します。
アザミウマの生態サイクル
種によって差はありますが、成虫の生存期間は50日前後で、「1 サイクル(卵期から成虫期まで)」は10日~20 日程度ですので、爆発的に増殖していきます(20~25度の環境下)
「防除が難しい!」と言われているのは、体長が小さく、増殖率が高く、薬液のかかりにくい場所(花の中や葉裏の葉脈の影など)に潜み,蛹になる前には地上に移動して土に潜るなど、薬剤をかけにくいためです。また、生態のステージで薬剤の効き方が異なるため、難防除害虫と言われています。
茄子(なす)で特に問題となるのは、主に「ミナミキイロアザミウマ」、「ミカンキイロアザミウマ」、「ヒラズハナアザミウマ」、「ネギアザミウマ」です。

特に果実に加害する「ミナミキイロアザミウマ」には注意が必要です。
果実への加害
 
 
【発生状況】
施設栽培の場合、開花時期と施設内の換気が増える時期に、外からの飛び込みによってアザミウマが侵入します。
施設内で、高温で乾燥した状態が続くとアザミウマの発生が増えます。
 
 
 
【防除のポイント】
施設内および施設周辺の雑草は、アザミウマの寄生場所や薬剤散布時の避難場所となるため除去し、衛生環境に努めます。
キラキラとした光の乱反射を期待できるシルバーマルチなどは忌避効果が期待できます。
青色と黄色に誘引されやすいため、ハウス入り口などに青色や黄色のものを置かないようにします。
施設の天窓、入口、換気部などに防虫ネットなどで被覆します。また、害虫の捕虫に物理的害虫捕獲資材(ホリバーブルーやホリバーロール)も効果的です。
多発させてしまうと一度の防除では抑制が困難になるので、ほ場をこまめにモニタリングして初発生を防除することが重要です。
アザミウマの密度をできる限り低くしてから、コナジラミ類とチャノホコリダニにも有効なスワルスキー(スワルスキーカブリダニ)を放飼します。
スワルスキーに加えて、ククメリス(ククメリスカブリダニ)やタイリク( タイリクヒメハナカメムシ)を放飼することで、長期間アザミウマの密度を抑制します。
天敵放飼後に化学薬剤を散布する場合は、天敵に影響の少ない薬剤と微生物殺虫剤(ボタニガードES)の併用をお勧めします。化学薬剤と併用することで相乗効果が得られます。
同一系統の連用は、薬剤感受性の低下につながりますので、異なる系統の薬剤をローテーション散布してください。
「ミナミキイロアザミウマ」や「ミカンキイロアザミウマ」などのアザミウマの種類によって、有効薬剤が異なりますので、圃場で発生するアザミウマの種類を判別することが重要です。
施設栽培の場合、栽培終了時に「蒸し込み処理」を行い、作物に寄生したアザミウマを死滅させ、施設外への分散を防止します。
 
 
 
 
 
 
 
「発生(発病)状況」や「防除のポイント」など、このページでご紹介した情報は一例です。
地域に「防除暦」などがある場合は優先的に参照して、注意点などをご確認ください。
対象病害虫、回数、収穫使用前日数などについては、使用前に必ずラベルを確認してください。