アリスタIPM通信 露地ナスのスワルスキー利用について(中間報告)
 
 
露地ナスのスワルスキー利用について(中間報告)
 
岡 裕美英
 
スワルスキーは2009年の上市以来、施設園芸を中心に多くの作物で使用され、本年5月には露地ナスで適用拡大になり、スワルスキーカブリダニ(以下、スワルスキー)の活躍の場がより一層広がりました。

9月2日に群馬県農業技術センターで、全国農業システム化研究会の露地ナスIPM実証調査の中間成績検討会が行われましたので、露地ナスにおけるスワルスキーを使った新たな取り組みを紹介します。

ここ数年、全国の露地ナス産地ではその土地由来の天敵(土着天敵)を利用したIPM防除の取り組みが増えていますが、その一方で、土着天敵の継続的な定着ができなかったり、カメムシやチャノホコリダ二等の防除が困難であったりと、課題が残されています。

そこで、アザミウマやチャノホコリダ二を捕食できて、併用できる殺虫剤が多いスワルスキーを土着天敵と組み合わせた防除体系の構築を進めています。

従来の土着天敵を用いた防除体系より、簡単に安定した効果を得られ、減農薬及び省力化につながります。誰もが簡単に使用し、安定した効果を得られるマニュアルを確立するために、群馬県の伊勢崎地区農業指導センターと栃木県の芳賀農業振興事務所にご協力頂き、システム化研究会の課題として取り組むことになりました。

露地ナスのスワルスキー利用について(中間報告)
中間成績検討会では群馬県の現地圃場を視察しました。

スワルスキーが順調に定着しており、多い葉では5~6頭が確認されました。

今作は全国的に5月下旬~7月上旬にスワルスキーを放飼しましたが、ほとんどの圃場で7月までは葉当り0.2~0.5頭程度の定着でした。

圃場視察の様子

ちなみに、施設ナスの場合だと放飼後1ヶ月で葉当り2~3頭見られるくらいに増えるので少々不安になる定着状況でしたが、7月中旬以降はどの圃場でも急激にスワルスキーが増加し、葉当り2~3頭確認できるようになりました。

視察先の園主もご自分の目でスワルスキーを確認することができ、非常に効果を実感しているようでした。

現地検討会の後、群馬県と栃木県の担当普及員から中間報告があり、意見交換が行われました。
群馬県の試験圃場では、天敵温存植物*1を活用していることもあり、土着天敵のヒメハナカメムシ類が早い時期から発生し、慣行区よりもアザミウマを低密度で抑えることができています。

群馬県の試験ではスワルスキーの適切な放飼時期を検討するため、6月中旬に放飼した圃場と7月中旬に放飼した圃場の2か所で調査を行っています。

6月放飼の圃場は7月頃からスワルスキーの安定した定着が見られ、8月下旬時点での定着数は7月放飼よりも多くなっています。一方、7月放飼は気温が上がり始めた時期ということもありスワルスキーの増殖が速く、短期間で全体に定着しました。

露地ナスのスワルスキー利用について(中間報告)
適切な放飼時期については今後の課題の一つです。

栃木県の試験圃場でもスワルスキー定着状況は同様で、8月以降は急激に増加が見られました。こちらもヒメハナカメムシ類は順調に定着していましたが、一方で害虫のカメムシの被害が7月下旬から多くなり、1~2割の被害果がありました。

そこで8月中旬にカメムシを防除するためにスタークルを散布しました。スタークルは害虫のカメムシに高い防除効果がありますが、ヒメハナカメムシなどの土着天敵にも強く影響があります。一方で、スワルスキーには影響が小さいため、今回はスタークルを選択しました。結果、カメムシの被害はなくなりましたが、ヒメハナカメムシもほとんど見られなくなりました。しかし、スワルスキーはスタークル散布後も順調に増加しました。

生産者にとっても、これまで土着天敵一本の体系では対応が難しくストレスを感じていたのが、スワルスキーと土着天敵の2本立ての体系で防除したことにより、カメムシ防除の農薬を使用してもスワルスキーが引き継いで活躍するため、安心感があるとのことでした。薬剤散布の回数が慣行防除と比べて約半分で済んだことで省力化にもつながり、スワルスキーの高い効果を実感されています。

今後は冬にかけて徐々に気温が下がることでスワルスキーの減少も予想されますが、露地の環境でいつまで活躍できるか、その時期を調査する予定です。結果については次回(?)報告させて頂きます。

乞うご期待!

露地ナスのスワルスキー利用について(中間報告)
検討会の様子
 
 
 
 

※2015年10月1日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。